農業農村整備事業の景観配慮対策に関わる調査における小型UAV活用ガイド

要約

農業農村整備事業の景観配慮対策に関わる調査において、小型UAVによる空中撮影と同撮影画像を用いた三次元化技術を活用する方策を記したガイドブックである。地域景観の特性や事業による周辺景観の影響の把握などの広域を対象とする調査において活用できる。

  • キーワード:農村景観、ドローン、三次元化技術、広域調査、合意形成
  • 担当:農村工学研究部門・農地基盤工学研究領域・農地利用ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7547
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

農業・農村の様々な場面において、小型UAV(ドローン)の活用が進んでいる。農林水産省が2018年5月に策定した「農業農村整備事業における景観配慮の技術指針」においても、小型UAVの活用が記されている。景観に関わる調査は広域的に実施する必要があり、景観配慮の取組みにおいて地域住民の合意形成などが重要となるため、小型UAVの効果的な活用方策が期待されている。
そこで、本研究では、農業農村整備事業の景観配慮対策に関わる調査において、小型UAVによる空中撮影と同撮影画像を用いた三次元化技術を有効に活用する方法を検討し、同調査における小型UAV活用ガイドを作成する。

成果の内容・特徴

  • 小型UAV活用ガイドには、(1)景観配慮における小型UAV活用の利点と留意点、(2)小型UAVを用いた景観情報の収集方法、(3)小型UAV撮影画像を用いた三次元コンテンツの作成方法、(4)撮影画像・三次元コンテンツを用いた情報共有方法が記されている。
  • 小型UAVを用いて、360°全方位の撮影を行う(図1の上:DJI社Phantom 4 Pro使用、高度100m、俯角0°で撮影)ことにより、地形や土地利用、景観構成要素など広域の景観情報の収集が可能である(図1の右下)。地図や現地踏査だけでは難しい地域景観の特性などの把握が可能であり、景観配慮対策における視点場設定に関わる調査などに活用できる。
  • 360°全方位撮影において、中景域(~2.5km)全体を無理なく視認できる(俯瞰一般上限内)画像を得るためには、高度90m以上からの撮影が必要となる。また、近景域(~400m)中心の画像を得るためには、高度60m以下もしくは俯角5°程度で撮影をおこなう。
  • 小型UAVで異なる視点から撮影した画像を用いて、SfM(Structure from Motion)ソフトウェア(Agisoft社 Metashape Professional Editionを使用)により三次元形状の復元を行い、得られた点群データを専用のビューアーソフト(CloudCompare Viewerを使用)で可視化することにより、景観の三次元表示が可能となる(図2の右上)。三次元化技術により得られる点群データや三次元モデルなどの三次元コンテンツは、視点場からの可視範囲の把握や各種景観シミュレーションなどで活用できる。
  • 三次元モデルを用いることにより、対象物の高さを推定することができる。居久根(屋敷林)の高さの推定に適用した例(図2の左)では、小型UAV空撮画像による推定値と実測値との差は1.5m以内に収まっている(図2の右下)。
  • 小型UAVによる空撮画像・動画や景観の三次元表示を用いたプレゼンテーション(図3)は、景観配慮対策に関わる地域住民の合意形成の場において有効である。

成果の活用面・留意点

  • 農業農村整備事業の実施にあたって景観配慮が必要となる現場や、住民参加型の景観づくりに取り組む地域において活用が可能である。
  • 本ガイドは「農業農村整備事業における景観配慮の技術指針」に関連する小型UAV活用技術の解説動画の付随資料と位置付けられる予定である。

具体的データ

図1 小型UAVによる360°全方位撮影の例,図2 三次元化技術を用いた居久根の高さの推定,図3 小型UAV空撮画像による景観の三次元表示を用いたプレゼンテーションの例

その他