水草除去に適した空気吸引の仕組みを有するジェットノズル

要約

水路にて繁茂する水草をポンプの水流によって除去する際に使用でき、ポンプの出力が一定であっても、作業者が手元で流体力の制御が可能なノズルである。ノズルは、流積を減少させつつ、空気を吸引できる形状であり、空気吸引の有無によって流体力を制御可能である。

  • キーワード:流体力、ポンプ、水路の維持管理
  • 担当:農村工学研究部門・水利工学研究領域・沿岸域水理ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7509
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

農業用水路にて水草が過剰に繁茂すると水路の通水能力が低下するため、水草の適切な除去が必要であるが、水草の除去作業は労働負荷が大きく管理上の問題となっている。ポンプの水の力で水草を除去する手法は有効な除去手法の一つであり、水の力が大きいほど水草を除去しやすいが、移動や休憩の際にもノズルを支える力を要することとなる。霞ヶ浦周辺の一部のレンコン農家は空気を吸引する仕組みのノズルを用いて水の力を制御し、レンコン収穫時には強い力とし、レンコン洗浄や移動の際には弱い力として作業性を向上している。本研究では、この仕組みを利用して、できるだけ水の力を引き出しつつ、かつ、ポンプの出力は一定としながらも、作業者が手元で水の力を制御できるノズルの仕組みを検討する。

成果の内容・特徴

  • ポンプから吐出される水の力で物を動かす場合、流速と流量の積で求められる流体力を最大化することが望ましい。流路の断面積が減少すると、流速が増加する一方で抵抗が増加しつつ流量が減少するため、得られる流体力は断面積とその形状によって左右される(図1)。ポンプ吐出水の流体力を最大化する断面積の減少割合はポンプによって異なるものの、市販の可搬可能なエンジンポンプでは50%前後である。
  • 流路となる管に、流路の断面積を減少する役割と空気を吸引する役割を併せ持つ突起物を挿入し、その空気穴を開閉することで、得られる流体力を制御することができる(図2)。空気穴を開けると突起物の直後で空気を連行し、断面積が減少したまま管から水が放出される。一方、空気穴を閉じると断面積が減少する効果を発揮しないまま管の端から水が飛び出し、突起物が流れの抵抗となって流体力が減少する。このため、ポンプの出力を変えることなく、空気穴の開閉によって流体力の大きさを制御することができる。
  • 水路内の水草を除去する際はノズルの先端部は水中に没するため、空気の吸引方法を工夫したノズルを図3に示す。ノズルは全体を二重管とし、内側の管は水の通り道、内側と外側の管の間は空気の通り道としている。作業者は、手元の1箇所の空気穴を開閉することで、流体力の大きさを制御することができる。

成果の活用面・留意点

  • 水草の除去作業は、ノズルの先端を底質に直接あてて、水草の根周辺の底質もろとも吹き飛ばすように行うことが望ましい(図4)。
  • 水草の除去を行う最適な作業時期は、対象とする水域の水温、日射、繁茂する水草に大きく左右される。

具体的データ

図1 断面積の減少率と流速、流量及び流体力の関係,図2 空気穴の開閉によって流体力が制御される仕組み,図3 水草除去用に考案したノズル,図4 水草の除去作業

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(受託試験)
  • 研究期間:2017~2019年度
  • 研究担当者:吉永育生、山岡賢、嶺田拓也、渡部恵司
  • 発表論文等:
    • 吉永ら(2019)農業農村工学会論文集、308(87-1):IV_1-IV_2
    • 吉永ら、特願2019年3月19日