多面的機能支払交付金活動を評価分析するためのデータ収集アプリ

要約

多面的機能支払交付金活動において義務付けられている報告書を、簡単な入力作業で自動的に作成することができる。同時に、末端水利施設の点検・補修履歴を管理し補修による減価償却費の節減効果を検証したり、活動の経済波及効果を評価したりするためのデータ収集を行うことができる。

  • キーワード:多面的機能支払交付金活動、活動報告書、補修履歴、経済波及効果、データ収集
  • 担当:農村工学研究部門・地域資源工学研究領域・資源評価ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-7509
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

多面的機能支払交付金活動においては、活動内容、金銭出納簿などの報告書作成が義務付けられている。しかし、報告書の作成等の事務処理は、非常に煩雑な作業を要するため組織の活動継続を阻む要因となっている。一方、活動報告書には、末端水利施設の点検・補修履歴、交付金の使途等、多面的機能支払交付金活動のパフォーマンスを評価する上で貴重な情報が含まれている。そこで、活動の記録と報告書の作成が簡単にできる上、施設の管理情報を地図データとして管理したり、得られたデータから経済波及効果を評価したりするためのデータ収集ツールを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本アプリには、PC上で入力作業を行うPC版と、活動している現場で入力を行うことができるモバイル版があり(図1)、活動記録については、日付、時間、参加者、活動内容をリスト化した取組番号、位置情報付き写真を、金銭出納については、金額、支出区分、領収書写真を記録することができる。また、支出がどの活動とリンクしているかについて、活動内容の一覧を参照しながら選択することができ効率的に事務処理を進めることができる。
  • 入力したデータから、活動記録(農林水産省が多面的機能支払交付金実施要領に定めた様式第1-6号)、金銭出納簿(同様式第1-7号)、実績報告書(同様式第1-8号)を作成することができるほか(図2)、日当単価や機械のリース料単価を設定することで、日当支払簿、リース料支払簿に支払額を算入することができ、さらに、領収証の発行も簡単にできる。
  • このような処理を可能とすることにより、活動組織の会計担当が実施する事務処理を容易にし、活動継続のハードルを低くすることができるとともに、市町村の担当者や施策の評価を試みる者が多面的機能支払交付金の活動データを入手したい場合にデータ入手の手間を省くことができる。
  • 活動記録はSQLite形式のファイルとして保存されるため、SQLite形式のデータを読み込むことができる地理情報システムに取り込み、更新履歴の参照、減価償却費節減効果の検証等に用いることができる。
  • 様式第1-7号に出力された支出データ、および領収書写真の住所情報を参照し、多面的機能支払交付金経済評価ツール(2018年度普及成果情報)の画面(https://kinohyoka.jp/)に必要事項を入力することにより、当該組織の多面的機能支払交付金活動による経済波及効果を試算することができる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本アプリは、平成31年4月に農林水産省ホームページにて公表された新様式に対応している。
  • 多面的機能支払交付金活動経済評価ツールへのデータ受け渡しは、図3で示したように金銭出納簿の集計結果をそのまま入力することもできるが、交付金の使途を52分類に仕分けして入力する方法も提示してあり、より正確な分析ができる。

具体的データ

図1 活動記録を入力する画面,図2 様式への出力イメージ,図3 経済評価効果ツールへの出力

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(SIP)
  • 研究期間:2017~2019年度
  • 研究担当者:遠藤和子、大塚芳嵩、國光洋二、唐﨑卓也、上田達己
  • 発表論文等:遠藤和子(2019)職務発明プログラム「多面的機能支払活動記録システム」、機構-Q39