小型サンドブラストを用いたモルタル系材料の促進摩耗試験

要約

コンプレッサーの圧力及び供試面までの距離を制御した状態で、供試面に対して垂直に小型サンドブラストで研磨材(5号珪砂)を吐出し、供試体を促進摩耗させる試験である。モルタルの耐摩耗性を2分以内で簡易に評価でき、現地に持ち運んで試験することも可能である。

  • キーワード:モルタル、促進摩耗、耐摩耗性、サンドブラスト、現地適用
  • 担当:農村工学研究部門・施設工学研究領域・施設保全ユニット
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

コンクリート開水路の補修対策として、モルタル系被覆材(以下、被覆材)により劣化した躯体表面を保護する方法が行われている。開水路では流水や流砂による摩耗作用を受けるため、被覆材は耐摩耗性を備えている必要がある。現在、耐摩耗性の照査は水砂噴流摩耗試験により行われているが、試験時間が10時間と長く、特殊な試験装置が必要であることから、だれもが手軽に行える試験ではない。また、試験装置は大型で、現地に施工された被覆材には適用できない。
そこで、本研究では、安価で入手容易な小型ブラスト装置を用い、圧縮空気により研磨材(5号珪砂)を噴出させることで供試体を切削摩耗させる促進摩耗試験を提案し、その性能を評価する。

成果の内容・特徴

  • 本試験系は、小型ブラストガン(吐出口径5mm)、コンプレッサー、バッファータンクによって構成される。コンプレッサーの圧力及び供試面までの距離を制御し、モルタルの供試面に対して垂直方向に研磨材(5号珪砂)を吐出することによって、モルタル供試体を促進摩耗させる。本試験では、モルタル供試体に直径30mm程度のすり鉢状の摩耗孔が発生し(図1)、摩耗孔の中央を通るようにレーザー変位計を走査させることで摩耗形状を取得する。骨材によるばらつきを軽減するために、得られた摩耗形状をガウス関数により近似し、最大摩耗深さを求める(図2A)。最大摩耗深さ及び供試体の質量減少量によって、モルタルの摩耗量を評価する。
  • 従来の被覆材の品質照査試験として実施されている水砂噴流摩耗試験では試験時間が10時間であるのに対し、本試験では同等の摩耗深さを1~2分程度で生じさせることができる(表1)。また、対象とする供試体寸法の制約がなく、試験装置も現地に持参可能である。
  • 最大摩耗深さは、同一圧力条件では距離が短いほど、同一距離条件では圧力が大きいほど、大きい値となる(図2B)。また、質量減少量は、同一の圧力条件下では、距離によらず概ね等しい(図2C)。
  • 一般に、水中養生の供試体は気中養生のものよりも表層が緻密となり、耐摩耗性が高い。JISモルタルを対象に本試験を適用した結果、最大摩耗深さと質量減少量は、気中養生>水中養生の順となった(図2B及び図2C)ことから、本試験では、養生等に起因するモルタル表層の耐摩耗性の差を評価できる。

成果の活用面・留意点

  • 本試験の実施においては、粉塵対策(マスクの着用、ダストカバーの設置等)を行う。
  • 本試験は、水砂噴流摩耗試験を代替するものではなく、より簡易な一次スクリーニング試験や、現地に施工された被覆材のモニタリング調査等への使用を想定している。
  • 供試体に発生する摩耗状況はブラストガンの仕様・性能によって異なるため、材料や地区ごとの耐摩耗性を比較する場合や、耐摩耗性の経時的な変化を評価する場合には、同じブラストガンを使用する。
  • 現地試験により得られたデータは、施設の劣化予測や余寿命推定への活用が期待できる。

具体的データ

図1 試験の状況,表1 水砂噴流摩耗試験との比較,図2 試験結果

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2019~2020年度
  • 研究担当者:金森拓也、川邉翔平、中嶋勇、高橋良次、森充広
  • 発表論文等:
    • 金森ら(2020)農業農村工学会論文集、311:IV_13-IV_14
    • 金森ら、特願(2021年1月15日)