中小規模施設向けで汎用性が高いUECS規格の環境計測・制御システム

要約

UECS規格を用いた複合環境制御するための汎用性が高い計測・制御システムは、開発した製作マニュアルによって安価に自作が可能であり、中小規模の生産施設でも活用可能である。

  • キーワード: 複合環境制御、ICT、UECS、Raspberry Pi
  • 担当: 野菜花き研究部門・野菜生産システム研究領域・施設野菜ユニット
  • 代表連絡先: 電話 029-838-6574
  • 分類: 普及成果情報

背景・ねらい

近年、施設園芸分野では、安定多収生産を目指して環境制御に対する関心も高まっており、ICTを利用したモニタリングや統合環境制御システムが開発されている。しかし、これらのシステムは高額かつそれぞれ独自の規格を用いるため、他の製品との互換性に欠ける。このような現状によって、中小規模の施設生産において環境制御技術の普及が大幅に遅れている原因となっている。そこで、ネットワーク対応の安価なシングルボードコンピュータ(Raspberry Pi)と、共通通信規格(UECS)を用い、低コストかつ汎用性の高い環境計測・制御システムを構築し、製作マニュアルを作成することで、環境制御技術の普及を図る。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、環境モニタリングのための計測を行うノードと、制御を行うノードで構成されるが、必要に応じて単独でも使用できる(図1)。
  • 計測ノードおよび制御ノードは、いずれも、ソフトウェアを書き込んだSDカードをRaspberry Piに装着し、ブラウザからアクセス後、設定を行うだけで作動するため、プログラミングの知識がなくても利用が可能である(図2)。設定や制御に用いるソフトウェアは、無償で公開中のソフト(UECS-Pi、(株)ワビット)を、計測データや制御機器の運転状況データのモニタリングには、UECSコントローラ(農研機構)を用いる。
  • 本システムの製作マニュアルを作成し、(株)ワビットのホームページにて公開中である。
  • 本システムは、計測ノードのセンサ情報のみならず、制御ノードによる制御情報も参照しながらの制御が可能である(図3)。例えば、一点の設定しかできない暖房機および換気窓を制御し、多段階の変温管理が可能にすること(図4A)や、タイマ制御しかできないCO2発生器を制御し、換気窓の開閉状況に応じたCO2濃度制御にすること(図4C)が可能である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:施設園芸生産者、研究・普及・指導機関等
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:施設園芸が盛んな地域・複合環境制御装置がない中小規模施設を中心に100件以上の普及予定。また、試験研究における環境データの収集および制御ツールとして8県の公設試験研究機関で活用し、技術拡散予定。
  • 本システムを導入することにより、温度制御、タイマ制御など、単純な制御しかできなかった機器に対し、基板の改良なく、高度な環境制御が可能となる。また、システムの拡張や縮小が低コストかつ容易にできることから、普及性に優れる。
  • 本システムは、インターネットに接続し、クラウドサービスを利用すれば、モニタリング、設定変更の遠隔操作および情報共有などが可能である。
  • 公設試験研究機関の研究員や生産者を対象に製作研修会を行っており、本システムの製作や使用方法などを農耕と園芸に連載している。計測ノードと制御ノードマニュアルのダウンロード数は、それぞれ540件、444件(2016年12月27日現在)である。
  • 本システムは、汎用性の高い材料を使用しており、自作した場合、計測ノードはセンサを含め、約6万円以下で、制御ノードは約3万円以下で製作することが可能である。

具体的データ

図1 本システム構成のイメージ,図2 システム構築の流れ,図3 本システムによる環境計測および制御事例

その他

  • 予算区分: その他外部資金(地域再生)
  • 研究期間: 2012~2016年
  • 研究担当者:
    安東赫、栗原弘樹、岩崎泰永、東出忠桐、中野明正
  • 発表論文等:
    1)安(2016)農耕と園芸、71(11)、46-52
    2)栗原(2016)農耕と園芸、71(12)、48-52
    3)安(2017)農耕と園芸、72(1)、46-52
    4)安(2017)農耕と園芸、72(2)、46-52