ピーマンでのジャガイモヒゲナガアブラムシ防除のためのギフアブラバチ利用技術

要約

ギフアブラバチは、施設栽培ピーマン等で発生するジャガイモヒゲナガアブラムシ防除のための生物農薬として利用できる。ギフアブラバチの利用法には成虫放飼法とバンカー法があり、バンカー法はジャガイモヒゲナガアブラムシの発生を継続的に抑制できる。

  • キーワード: ギフアブラバチ、ジャガイモヒゲナガアブラムシ、ピーマン、バンカー法
  • 担当: 野菜花き研究部門・野菜病害虫・機能解析研究領域・虫害ユニット
  • 代表連絡先: 電話 029-838-6574
  • 分類: 普及成果情報

背景・ねらい

近年、西日本の施設栽培ピーマンでは、ジャガイモヒゲナガアブラムシによる被害が顕在化している。現在、生物農薬として市販されている天敵類では、ジャガイモヒゲナガアブラムシに対して十分な防除効果が得られる事例は少ない。一方、土着天敵のギフアブラバチAphidius gifuensisは、ジャガイモヒゲナガアブラムシやモモアカアブラムシに寄生し増殖率も高いことから、ジャガイモヒゲナガアブラムシに対する防除効果が期待されている。そこで、ギフアブラバチを生物農薬として登録するとともに、本種を利用したジャガイモヒゲナガアブラムシの防除技術を開発する。また、ギフアブラバチの利用普及を図るため、本種の利用法等を解説したマニュアルを作成する。

成果の内容・特徴

  • ギフアブラバチ(図1)は、大量増殖技術等を開発した後に、2016年1月20日に生物農薬として登録した(農林水産省登録第23771号、商品名ギフパール(R))。本製剤の適用害虫はアブラムシ類、適用作物は施設栽培のピーマン、とうがらし類、なすである。
  • ギフアブラバチの利用法には「成虫放飼法」と「バンカー法」がある。成虫放飼法では、ジャガイモヒゲナガアブラムシの発生初期(ピーマンの被害株率1%以下)にギフアブラバチ成虫を250~500頭/10aの密度で2、3回放飼することで、ジャガイモヒゲナガアブラムシの被害抑制効果が得られる(図2)。ジャガイモヒゲナガアブラムシの発生量が多い場合には(被害株率概ね2%以上)、初めにギフアブラバチ等の天敵類に影響の少ない殺虫剤を散布してアブラムシの密度を低下させた後にギフアブラバチを放飼する。
  • ギフアブラバチのバンカー法では、施設ほ場内にバンカー(図3)を設置した後でギフアブラバチを放飼する。バンカー上で増殖したギフアブラバチは、ピーマンに移動してジャガイモヒゲナガアブラムシの発生を抑制する。バンカーを1~2ヶ月ごとに更新してギフアブラバチを維持することで、ジャガイモヒゲナガアブラムシを継続的に抑制できる(図4)。バンカーを始めるために必要な資材は、「バンカー開始セット」(商品名ギフバンク)として発売されている。
  • ギフアブラバチ利用技術マニュアルには、ギフアブラバチとジャガイモヒゲナガアブラムシの生態、ギフアブラバチの増殖法、各種農薬の影響、施設栽培ピーマンでの利用法が記載されている。また、甘長とうがらし、カラーピーマンで発生するモモアカアブラムシ防除へのギフアブラバチの利用法も紹介している。マニュアルはインターネット上でダウンロードできる(URLは発表論文等を参照)。

普及のための参考情報

  • 普及対象: 施設栽培ピーマン、とうがらし類、なすの生産者及び産地の普及指導機関
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等: おもに西日本の施設栽培ピーマン等120ha
  • その他: ギフアブラバチで防除可能なアブラムシは、ジャガイモヒゲナガアブラムシとモモアカアブラムシである。その他の害虫アブラムシ類に対しては防除効果が得られない。ギフアブラバチの利用法、ギフアブラバチ利用技術マニュアルの内容に関する問い合わせ先は農研機構野菜花き研究部門、 ギフパール(R)、ギフバンクに関する問い合わせ先はアリスタライフサイエンス株式会社である。

具体的データ

図1 ギフアブラバチ雌成虫(上)とギフアブラバチに寄生されて出来たアブラムシマミー(右下); 図2 施設栽培ピーマンでのジャガイモヒゲナガアブラムシに対するギフアブラバチの密度抑制効果【成虫放飼法】。図中の矢印はギフアブラバチの放飼日。1回当たりの放飼密度は500頭/10a相当。
; 図3 ピーマンほ場に設置したギフアブラバチ用のバンカー(右側手前)。コムギ、オオムギ上にギフアブラバチの餌昆虫(寄主)であるムギヒゲナガアブラムシを付けて増やしたもの。ギフアブラバチはバンカー上で増殖した後に、ピーマンに移動して害虫のジャガイモヒゲナガアブラムシに寄生する。ムギヒゲナガアブラムシはピーマン等の野菜類を加害しない。; 図4 施設栽培ピーマンでのジャガイモヒゲナガアブラムシに対するギフアブラバチの密度抑制効果【バンカー法】。鹿児島県志布志市のピーマン生産者ほ場での現地試験のため、無放飼区の設定はなし。グラフ枠線上の矢印↓はギフアブラバチの放飼日(20頭/10a相当)、

その他

  • 予算区分: 交付金、競争的資金(農食事業)
  • 研究期間: 2011~2016年度
  • 研究担当者:
    太田泉、武田光能、柿元一樹(鹿児島農開総セ)、松比良邦彦(鹿児島農開総セ)、井上栄明(鹿児島農開総セ)、大薗正史(鹿児島農開総セ)、妙楽崇(岐阜農技セ)、杖田浩二(岐阜農技セ)、野口忠久(長野野菜花き農試)、北林聡(長野野菜花き農試)、桑澤久仁厚(長野野菜花き農試)、増澤高亨(長野野菜花き農試)、清水徹(琉球産経)、山崎あかね(琉球産経)、山中聡(アリスタライフサイエンス)、江口博美(アリスタライフサイエンス)、中村善二郎(アリスタライフサイエンス)
  • 発表論文等:
    1) 農研機構(2016) 「ギフアブラバチ利用技術マニュアル(2016年版・技術者向け)」 (2016年10月1日)
    2) 太田、武田(2016)植物防疫、70(9):24-29