土壌病虫害複合抵抗性台木用トウガラシ品種候補、トウガラシ安濃交3号

要約

トウガラシ安濃交3号は、疫病、青枯病、ネコブセンチュウに強度抵抗性を示し、トバモウイルス抵抗性遺伝子としてL3を持ち、穂木用ピーマン品種の収量性が「台パワー」より優れる台木用品種候補であり、L3を持つピーマン品種の台木として利用できる。

  • キーワード:抵抗性台木用トウガラシ、疫病、青枯病、トバモウイルス、ネコブセンチュウ
  • 担当:野菜花き研究部門・野菜育種・ゲノム研究領域・ナス科ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-6574
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

疫病、青枯病およびネコブセンチュウは、わが国のピーマンおよびトウガラシ類(以降、ピーマン類とする)の栽培において、大きな被害を及ぼす土壌伝染性病害虫であり、これらを回避するには抵抗性台木の利用が有効である。また、ピーマン類の接ぎ木栽培では、Pepper mild mottle virus(PMMoV)を含むトバモウイルスに対する抵抗性遺伝子(L遺伝子)の種類が穂木と台木で異なると、穂木・台木のいずれかにトバモウイルスが感染すると萎凋・枯死する場合があるので、穂木と台木のL遺伝子の種類を同一にする必要がある。農研機構ではL3遺伝子を有する土壌病虫害抵抗性台木用品種「台パワー」を先行して発表した(2011年)。しかしながら、「台パワー」を台木として用いた場合の穂木の収量性の向上等が求められている。そこで、これらの特性を改良した新規台木用品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • トウガラシ安濃交3号は、種子親に疫病・青枯病・PMMoV(P1.2)抵抗性系統CBP-1、花粉親に疫病・青枯病・ネコブセンチュウ・PMMoV(P1.2)抵抗性品種「台パワー」を用いて交配したF1系統である(図1)。
  • トウガラシ安濃交3号は、疫病、青枯病およびネコブセンチュウに強度抵抗性を示し、PMMoV(P1.2)に抵抗性を示すL3遺伝子を有する(表1)。
  • トウガラシ安濃交3号を台木として使用した場合の穂木用ピーマン品種「京鈴」の収量は、「台パワー」を台木とした場合より多く、穂木用ピーマン品種「京鈴」を自根栽培した場合の収量と同等である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • トウガラシ安濃交3号を台木とする接ぎ木栽培では、穂木用品種にトバモウイルス抵抗性としてL3遺伝子を持つ品種を用いる。
  • トウガラシ安濃交3号は疫病、青枯病およびネコブセンチュウに対して抵抗性を示すが、病原菌やセンチュウの密度が高い圃場での栽培など、条件によっては発病する可能性があるため、土壌消毒など他の防除法を併用することが望ましい。

具体的データ

図1 トウガラシ安濃交3号の育成図?図2 トウガラシ安濃交3号の草姿(左)と未熟果実(右)?表1 トウガラシ安濃交3号の疫病、青枯病、ネコブセンチュウおよびトバモウイルス抵抗性?表2 トウガラシ安濃交3号を台木とした場合の穂木用品種(「京鈴」)の上物収量(kg/a)z

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2000~2016年度
  • 研究担当者:松永啓、齊藤猛雄
  • 発表論文等:松永ら トウガラシ安濃交3号 品種登録出願 2017年4月24日(第32081号)