強度のレタスビッグベイン病抵抗性を有するマーカーフリー組換えレタス
要約
ミラフィオリレタスビッグベインウイルスの外被タンパク質遺伝子を標的としたRNAi誘導コンストラクトをTwo T-DNA法によって導入し選抜したレタスは、マーカーフリーで、レタスビッグベイン病に対して強度の抵抗性を有する。
- キーワード:レタスビッグベイン病、ウイルス抵抗性、組換えレタス、マーカーフリー、MLBVV
- 担当:野菜花き研究部門・野菜育種・ゲノム研究領域・ウリ科・イチゴユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-6574
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
レタスビッグベイン病は、ミラフィオリレタスビッグベインウイルス(MLBVV)によって引き起こされる病気であり、国内外のレタス産地で甚大な被害を及ぼしている。本病は土壌伝染性であるため薬剤防除が難しく、抵抗性品種の育成が強く求められている。しかし交雑可能な遺伝資源の中には強度抵抗性の育種素材がなく、交雑育種は困難なため、遺伝子組換え技術の利用が想定される。また遺伝子組換えレタスを消費者に受け入れられやすくするためには、組換え体の選抜に用いる抗生物質耐性遺伝子を含まないだけでなく(マーカーフリー)、レタスに導入されるプロモータ・ターミネータ等のDNA配列についても極力レタス由来のものを用いることが望ましい。そこで、マーカーフリーの組換え植物を作出する方法として広く利用されているTwo T-DNA法を用いて、レタス以外の遺伝子を最少にしたRNAi誘導コンストラクトを導入し、マーカーフリーかつレタスビッグベイン病抵抗性のレタスを開発する。
成果の内容・特徴
- RNAi誘導コンストラクトの導入に利用したバイナリーベクターは、レタス以外の遺伝子を最少にするため、レタス由来のプロモータ、イントロン、ターミネータを用いるとともに、組換え体選抜時に必要な抗生物質耐性遺伝子(npt II)を後代で排除できる構造を有する(図1)。
- このバイナリーベクターを保有するアグロバクテリウムをレタスに感染させると、2個のT-DNA領域が染色体の異なる部位に挿入された組換えレタスが得られ、その後代から選抜された系統は、npt IIを持たずRNAi誘導コンストラクトのみを1コピー有する(図2レーン1~2および6~9)。
- RNAi誘導コンストラクトを保有する組換えレタスに対して、レタスビッグベイン病抵抗性検定を行うことにより、汚染土壌で栽培しても発病せず、MLBVVも蓄積しない系統が得られる(表1)。
- 上記の1~3に示した手法によって作出したレタスは、マーカーフリーで、既存の抵抗性品種よりも強度のレタスビッグベイン病抵抗性を有し、抵抗性は世代(T4~T6)を経ても安定している。
成果の活用面・留意点
- 作出されたレタスは、育種素材あるいは実用品種として利用できる。
- 作出されたレタスを野外で栽培するためには、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」に基づく第一種使用規程の承認を受ける必要があり、商品化するためには食品衛生法に従って安全性審査を受ける必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2006~2016年度
- 研究担当者:川頭洋一、冨士山龍伊、今西俊介、福岡浩之、山口博隆、松元哲
- 発表論文等:Kawazu Y. et al. (2016) Transgenic Res. 25:711-719