ダリアに感染するウイルス・ウイロイドの同時検出技術
要約
マルチプレックスRT-PCR法を用いることで、ダリアに感染するトマト黄化えそウイルス(TSWV)、ダリアモザイクウイルス(DMV)およびキク矮化ウイロイド(CSVd)の罹病性検定を同時に行うことができる。
- キーワード:TSWV、DMV、CSVd、ダリア、マルチプレックスPCR
- 担当:野菜花き研究部門・花き生産流通研究領域・生産管理ユニット
- 代表連絡先:電話029-838-6811
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
近年、ダリアは切り花として生産額が増加傾向にある有望な品目であり、無病で高品質な種苗の需要が高まっている。ダリアの増殖は、球根や挿し芽等による栄養繁殖によって行われるため、親株がウイルスやウイロイド等に罹病していると、球根・刺し芽苗を通じて被害が拡大する。ダリアの生産において特に被害が問題になるのはトマト黄化えそウイルス(TSWV)、ダリアモザイクウイルス(DMV)およびキク矮化ウイロイド(CSVd)であり、これらの病原体を持たない健全な植物体を親株として選抜する必要がある。本研究においては、これらの病原体を同時に検出出来るマルチプレックスRT-PCRの条件を確立し、ダリアにおける省力的な検定法を開発する。
成果の内容・特徴
- 本遺伝子診断法には1反応で複数遺伝子を同時に増幅することができるマルチプレックスRT-PCRを用いる。マルチプレックスRT-PCRにはTSWV、DMV、CSVdに対応した6種のプライマーを用いる(表1)。また、各プライマー液を含む反応液の組成および反応条件は表2および図1のとおりである。
- PCR産物を電気泳動すると、TSWV、DMV、CSVdの感染植物から、それぞれの病原体の遺伝子に由来する720bp、402bpおよび249bpの増幅遺伝子産物が得られる(図2)。また、混合感染ダリアにおいても単独の感染による検出と同様に、増幅反応に干渉がみられず高い精度で同時に検出される。
- 本法はRNA抽出物をサンプルとして用いる以外に、針で親株の葉または茎を刺して、針先を反応溶液に浸すことでも検出可能である。この場合は、針先に付いたダリアの汁液をテンプレートとしている。
- TSWVは植物体に局在することが知られており、茎の先端部および未展開葉においては感染濃度が低いため、検定部位としては茎では展開した葉より下の部位、葉では展開した葉を利用する。DMVとCSVdの局在は知られておらず、同じ方法での検出が可能である。
普及のための参考情報
- 普及対象:都道府県研究機関および普及センター、民間種苗会社である。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:ダリア生産地を有する全国の都道府県および球根販売を行う民間業者で利用可能である。
- その他:本手法は奈良県農業研究センターに導入され、親株の検定を実施した結果、ダリア球根産地における感染株は減少している。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
- 研究期間:2013~2017年度
- 研究担当者:松下陽介、浅野峻介(奈良農研セ)、平山喜彦(奈良農研セ)、仲照史(奈良農研セ)
- 発表論文等:
1)Asano S. et al. (2015) Lett. Appl. Microbiol. 61(2):113-120
2)Asano S. et al. (2017) Lett. Appl. Microbiol. 64(4):297-303