赤色光を昼間に作物に照射し、ミナミキイロアザミウマの誘引を抑制する
要約
660nmのピーク波長を持つ赤色光を、緑色の植物に昼間だけ照射することで、ミナミキイロアザミウマが寄主植物に近づく行動を抑制できる。
- キーワード:光防除、赤色光、物理的防除、行動
- 担当:野菜花き研究部門・野菜病害虫・機能解析研究領域・虫害ユニット
- 代表連絡先:電話050-3533-1838
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
ミナミキイロアザミウマはキュウリやナスをはじめ多くの野菜類を加害する重要害虫である。施設栽培のナスやメロンに赤色光を照射すると作物上のミナミキイロアザミウマの個体数が減少することが報告されているが、なぜ赤色光が防除効果を示すのかは不明である。この制御機構を明らかにすることは、赤色光の適切な利用法の確立や害虫防除のための赤色光照明装置の現場実装へとつながることが期待される。そこで、赤色光照射環境でのミナミキイロアザミウマの行動を検証する。
成果の内容・特徴
- 660nmをピーク波長とする赤色LED光(半値幅:25nm)を1.0×1018photon/m2・sの光強度で、日中にミナミキイロアザミウマの寄主植物であるキュウリ苗に8時間照射すると、赤色光を照射された苗への誘引率が低いことが認められる(図1)。この傾向は、赤色光を上から照射しても横から照射しても同様である(図1)。また照射する環境が、太陽光が当たる温室でも蛍光灯を点灯した室内でも変わらない(図1)。すなわち、昼間に照射された赤色光は、ミナミキイロアザミウマ成虫が寄主植物に近づかないように行動を変化させる。
- 人工太陽灯(キセノンランプ)を点灯した室内で、緑色の粘着トラップにミナミキイロアザミウマは誘引されるが、このトラップに赤色光を照射すると誘引率が低下する(図2)。
- ミナミキイロアザミウマは暗環境では、ほとんど移動しない。しかし、暗室に設置した黒色のアクリル円筒内にアザミウマを放した後に、円筒の片端に赤色LEDパネルを点灯すると、光強度が高いほど多くのミナミキイロアザミウマが光源に誘引される(図3)。これより、赤色光を夜間に照射するとミナミキイロアザミウマが誘引されることがわかる。
成果の活用面・留意点
- 昼間に植物体に赤色光を照射することがミナミキイロアザミウマの行動制御につながる重要な基礎的知見である。
- 昼間に赤色光を作物に照射するとミナミキイロアザミウマの作物への寄生率が減少することが期待され、防除効果が見込まれる。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、その他外部資金(SIP)
- 研究期間:2015~2017年度
- 研究担当者:村田未果、針山孝彦(浜松医大医)、山濱由美(浜松医大医)、外山美奈(浜松医大医)、太田泉
- 発表論文等:
1)Murata M. et al. (2017) Ethol. Ecol. Evol. doi:10.1080/03949370.2017.1320688
2)Murata M. et al. (2017) Appl. Entomol. Zool. doi:10.1007/s13355-017-0537-5