効率的に作業記録が可能で省力化に寄与する施設園芸用作業管理システム
要約
トマトやパプリカなどの大規模施設園芸の作業において、多数の作業者がタグを用いて効率的に作業時間や収穫量などの作業データを入力可能で、入力データに基づいて、省力的に作業計画が策定できるシステムである。作業改善による作業の省力化に寄与する。
- キーワード:施設園芸、トマト、パプリカ、作業管理、省力化
- 担当:野菜花き研究部門・野菜生産システム研究領域・生産工学ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-8681
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
施設園芸の大規模栽培では、作業管理者が作業計画を策定し、多数の作業者が計画に基づき、組作業で収穫作業や管理作業などを行っている。作業量には変動があるので作業の調整と省力化が望まれている。作業管理者は作業管理の他、自ら作業も行っており、大きな負担である。経営面では、総支出の内、人件費が3割程度と大きな割合を占めており、作業の省力化は収益の向上につながる。そこで、作業の省力化のために、作業時間や収穫量などの作業データの、タグを用いた省力的な入力が可能であり、記録データに基づいて効率的に作業管理が可能なシステムを開発することを目的とする。
成果の内容・特徴
- 開発した作業管理システムは、ICタグ型、QRコード型、バーコード型の3種類あり、タグを用いて収穫量を含む作業データを半自動で入力できる(図1)。ICタグ型はICカード、腕時計型ICタグ、リーダー、タブレットから主に構成される。QRコード型はスマートフォン、バーコード型は専用装置から主に構成される。
- 各システムはICカードなどの読み取りタグを各作業者が持つとともに、栽培ベッド列端などにもタグを取り付け、作業開始時と終了時にタグをリーダーで読み取り、作業者名、作業場所名、作業時間を入力する(図2)。作業名はタグによる読み取り、または、端末から選択入力する。収穫量は、はかりを取り付けて自動で入力されるか、手動入力する。管理作業などの作業量は手動入力する。
- ICタグ型、QRコード型は回線を通して入力データをクラウドサーバに転送、記録し、生産者所有のパソコンで作業能率を閲覧できる。さらに、記録データに基づいて作業進捗の確認、作業計画をパソコンの操作で容易に、効率的に行うことができる(図3)。バーコード型は入力データを無線LANでパソコンに転送、記録する。
- 筆記具による野帳方式と比べると、1人1日当たり約5分少ない時間で作業員が作業データを入力することができ、施設面積1ha、作業員40名では記入時間をのべ3時間20分削減できる(図4)。
- ICカード型、QRコード型の場合、施設面積1haの作業管理者が、作業員40名分の作業データのパソコン入力、計画策定などに要する時間を1時間程度短縮できる(図4)。
普及のための参考情報
- 普及対象:トマトなどの大規模施設園芸生産者を対象とし、作業全体の効率化による経営の高収益化を図ることができる。
- 普及予定面積・普及台数等: 5年間で30経営体以上に普及予定。
- 作業者が作業能率を高頻度で確認し、適切に作業改善を行うと収穫作業、芽かきなど管理作業の能率が3~4割程度向上する。
- その他:1)ICタグ・QRコード型は小林クリエイトより販売予定。2)栽培ベッド列ごとなど、作業の区切りごとにICカードなどの読み取り対象を設置する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分:委託プロ(27補正「地域戦略プロ」、28補正「経営体プロ」)
- 研究期間:2016~2019年度
- 研究担当者:太田智彦、岩﨑泰永、東出忠桐、深津時広、坪田将吾、内藤裕貴、山田哲資、松林和幸(小林クリエイト(株))
- 発表論文等:
- Ota T. et al. (2019) EAEF,12(1):40-47
- 太田ら「農業支援システム及び農業支援方法」特許第6569956号(2017年4月5日)