ブロッコリーV字仕立てによる12cm径花蕾の2花蕾どり増収技術
要約
ブロッコリーの秋冬作型で、品種「夢ひびき」を第7~11葉齢時に摘心し、側枝を2本残すV字仕立てを行うことで、約12cm径の花蕾が1株から2つ収穫することが可能となり、可販品質花蕾の収穫本数が慣行栽培と比較して約60%増加する。
- キーワード:露地野菜、側枝利用、側花蕾、摘心、芽かき
- 担当:野菜花き研究部門・野菜生産システム研究領域・露地生産ユニット
- 代表連絡先:電話 029-838-8528
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
青果向けブロッコリーの中心規格は12cm径花蕾であり、この規格の花蕾数増加が最も望まれている。頂芽があると側枝の生育は抑制され、側花蕾が12cm径に達するのはまれであるが、頂芽を取り除く(摘心する)ことで側枝は伸長を開始する。本研究は、摘心後に芽かきし、側枝を2本に仕立てる「V字仕立て2花蕾どり技術」を確立し、秋冬作期に約12cm径の花蕾を1株から2個収穫して増収を図ることを目的とする。具体的には、側花蕾の肥大性が強い品種「夢ひびき(ナント種苗)」の側枝総本数や葉位ごとの発生確率を明らかにするとともに、収穫個数を最大化するV字仕立ての葉齢を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 側花蕾の肥大性が強い品種である「夢ひびき」を摘心し、その後、芽かきをして強い側枝を2本残した2本仕立てにすることで、12cm径花蕾が1株から2個収穫できる(図1)。
- 「夢ひびき」 1個体に発生する腋芽総本数は4.7本であり、特に第5葉から第8葉にかけては腋芽の発生確率が80%前後と高い(図2)。
- 第7葉齢から第11葉齢の間に摘心を行いV字仕立てとした場合、慣行栽培(対照区)と比較して可販品質花蕾数が有意に増えるが、第11葉齢で摘心を行った場合に最も多く、約60%増加する(表1)。
- 摘心をする葉齢が遅くなるにつれ、収穫時期は遅くなる(図3)。
- 定植~平均収穫日の積算温度は、慣行栽培では約1200(°C・日)、V字仕立では約1500(°C・日)である。また、摘心時期の目安である第7~11葉齢となるのは、定植後約400~600(°C・日)である。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、2017年のつくば市観音台にある農研機構野菜花き研究部門の試験圃場における栽培試験の結果に基づいており、播種日、定植日はそれぞれ8/1、8/25である。
- 単収が増加するため、面積拡大が難しい地域での活用が期待される。
- V字仕立て栽培に必要な積算温度は慣行栽培の約1.3倍のため、気候によって2作分の栽培が厳しい地域において、圃場と労働力の効率的な活用が可能となる。
- V字仕立てをすることで栽培期間が延長するため、肥切れを起こさないように施肥量を増やし、生育適期を過ぎて低温に遭遇しないように注意する。
- 花蕾1つ当たりの新鮮重は約25%低下するが、ブロッコリーの規格は花蕾径を基準とした数量出荷が行われているため、規格内収穫個数の増加は出荷量の増加となる。
- 積算温度は、他地域でV字仕立てを実施する場合の、摘心を行う時期や収穫時期の目安として活用できる。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2015~2017年度
- 研究担当者:高橋徳、佐々木英和
- 発表論文等:Takahashi M. et al. (2019) Hort. J. 88:364-372