メロン退緑黄化病抵抗性を有する「メロン中間母本農5号」

要約

「メロン中間母本農5号」は系統I-10に由来する"メロン退緑黄化病抵抗性"を有する。本抵抗性は劣性に遺伝し、少なくとも1つの主要な遺伝子が関与する。本中間母本はメロン退緑黄化病抵抗性育種に利用できる。

  • キーワード:メロン、退緑黄化病抵抗性、ウリ類退緑黄化ウイルス、タバココナジラミ
  • 担当:野菜花き研究部門・野菜育種・ゲノム研究領域・ウリ科・イチゴユニット
  • 代表連絡先:電話 050-3533-1833
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

メロン退緑黄化病はウリ類退緑黄化ウイルス(Cucurbit chlorotic yellows virus; CCYV)を病原とするウイルス病で、タバココナジラミによって半永続的に伝搬される。CCYVに感染すると、葉に退緑した小斑点を生じ、その後、葉全体が黄化する。果実に病斑は現れないが、果実重および糖度は低下する。特に抑制栽培におけるアールス系メロンでの被害が深刻である。この病害に抵抗性を有するメロン品種はなく、また、媒介虫のタバココナジラミは一部の農薬に対する感受性が低下しているため、農薬のみで完全に防除することは困難である。そこで、メロン退緑黄化病抵抗性品種を育成するための素材として、安定した抵抗性を有し、かつ、雌花着生性および糖度等の果実形質に優れる中間母本を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「メロン中間母本農5号」は、固定品種「アールスフェボリット春系3号(春系3号)」にメロン退緑黄化病抵抗性を有する系統I-10を交雑した後代について、抵抗性検定による選抜と自殖を繰りかえすことにより、メロン退緑黄化病抵抗性を固定するとともに雌花着生性等の主要形質を向上させた中間母本である(図1A、B)。
  • 「メロン中間母本農5号」はメロン退緑黄化病に抵抗性を有する(図1C)。高温等の条件で発病する場合があるが、発病した場合でも罹病性品種「ミラノ夏I」に比べて発病程度はきわめて"軽い"(表1)。
  • 「メロン中間母本農5号」の節間および葉柄は"長く"、葉身は「春系3号」と同程度から"やや小さい"(表2)。雌花着生率は、素材であるI-10に比べ"高い"。成熟日数は45日程度で、「春系3号」に比べ10日ほど早く離層が形成されるため、"へた離れし易い"。果実は「春系3号」に比べ"小さく"、花痕部は"大きい"。糖度はI-10に比べ"高く"、11°Brix程度である。
  • 「メロン中間母本農5号」と罹病性メロン「AnMP-5」(F1品種「アルシス」の親品種)とを交雑したF1の発病評点は、「AnMP-5」と同程度の値を示す。また、発病評点2.0以下のF2個体を抵抗性と判定すると、抵抗性個体(28個体)および罹病性個体(86個体)の出現頻度から、メロン退緑黄化病抵抗性は劣性に遺伝し、1つの主要な遺伝子が関与すると推察される(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 「メロン中間母本農5号」は、メロン退緑黄化病抵抗性品種を育成するための素材として利用できる。本品種のメロン退緑黄化病抵抗性は劣性に遺伝するため、「メロン中間母本農5号」を素材として抵抗性を持つF1品種を育成するためには、両親への抵抗性付与が必要である。
  • 抵抗性品種の育成過程において抵抗性個体を選抜するためには、CCYVを保毒したタバココナジラミを用いてウイルスを接種して抵抗性を評価する必要がある。

具体的データ

図1 「メロン中間母本農5号」の植物体、果実および葉,表1 「メロン中間母本農5号」のメロン退緑黄化病抵抗性,表2 「メロン中間母本農5号」の植物体および果実特性,図2 「メロン中間母本農5号」と「AnMP-5」との交雑F2集団におけるメロン退緑黄化病抵抗性検定の発病評点の分布

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2012~2019年度
  • 研究担当者:杉山充啓、川頭洋一、下村晃一郎、吉岡洋輔、坂田好輝、野口裕司、奥田充、上田重文、大和陽一、前田昭一
  • 発表論文等:
    • 杉山ら「メロン中間母本農5号」品種登録出願公表第33973号(2019年9月5日)
    • 杉山ら(2019)農研機構研究報告、2:1-9