強度の根こぶ病抵抗性と高い実用形質を有するキャベツ「YCRふゆいろ」
要約
「YCRふゆいろ」は市販品種で最も高いレベルの根こぶ病抵抗性を有する。球の肥大性は良好で、球形は平玉となり、家庭消費用、加工・業務用ともに利用できる。
- キーワード:キャベツ、根こぶ病抵抗性、加工・業務用、寒玉、DNAマーカー
- 担当:野菜花き研究部門・野菜育種・ゲノム研究領域・アブラナ科ユニット
- 代表連絡先:電話 050-3533-1833
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
根こぶ病はアブラナ科野菜全般を侵す難防除の土壌病害で、被害株は根部がこぶ状に肥大し、減収または枯死にいたる。農薬散布や菌密度低下のための耕種的防除による被害軽減が図られているが、抵抗性品種を利用することで、より確実で効果的な総合防除が可能となる。同じアブラナ科野菜のハクサイでは多数の抵抗性品種が利用されているが、キャベツでは抵抗性に関与する遺伝子が複数のため育種が難しく、抵抗性品種の数は極めて少ない。そこで、DNAマーカー選抜を利用し、キャベツの根こぶ病抵抗性品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「YCRふゆいろ」は、3座の根こぶ病抵抗性QTLsのうち最も寄与率の高い1座をホモに有する細胞質雄性不稔系統Tneを種子親に、DNAマーカー選抜の利用により3座のQTLsを集積した理RYす441-5を花粉親にもつF1品種である(図1)。
- 「YCRふゆいろ」は根こぶ病に抵抗性を有する。強い接種圧の幼苗接種検定による抵抗性程度は、市販の根こぶ病抵抗性品種の中で最も強い抵抗性を示す「YCR理念」に比べ"同程度~やや強"、「YCRこんごう」、「YCRげっこう」に比べ"強"である。(図2)。
- 「YCRふゆいろ」の草丈、株の幅は「YCR理念」よりも"大"で、「松波」よりコンパクトである。球の肥大性、収量性は「松波」、「YCR理念」よりも優れる。球形は寒玉キャベツ系の平玉となり、「松波」よりも"扁平"である(表1、図3)。球表面のアントシアニン着色は"少"、球内部のチップバーン等の生理障害の発生は"極少"である。
成果の活用面・留意点
- 「YCRふゆいろ」は、夏まき冬どり作型に適し、家庭消費用、加工・業務用ともに利用できる。
- 「YCRふゆいろ」は、根こぶ病多発圃場での発病がほとんど認められないなど強い根こぶ病抵抗性を有している。一方で、多様な根こぶ病菌の中には本品種を加害する菌株が存在する可能性もあることから、耕種的防除を含む総合防除を行うことが望ましい。
- 「YCRふゆいろ」は、萎黄病に抵抗性を有する。
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金、委託プロ(次世代ゲノム、温暖化適応・異常気象対応)
- 研究期間:2010~2019年度
- 研究担当者:
松元哲、小原隆由、畠山勝徳、柿崎智博、吹野伸子、板橋悦子、近藤友宏((株)日本農林社)、高下新二((株)日本農林社)、宮崎俊夫((株)日本農林社)
- 発表論文等:
- 松元ら「「YCRふゆいろ」」品種登録出願公表第34174号(2019年12月12日)