交雑育種によるダリアの日持ち性向上に適した育種素材

要約

ダリアは切り花の日持ち性に劣ることから、日持ち性の遺伝的な改良が強く望まれている。日持ち性良の「ミッチャン」を育種素材として、抗菌剤液に生けた切り花の日持ち日数を指標とした選抜と、その選抜系統間での交配を繰り返すことにより、ダリア切り花の日持ち性改良が可能である。

  • キーワード:ダリア、日持ち日数、良日持ち性、品種間差、交雑育種
  • 担当:野菜花き研究部門・花き遺伝育種研究領域・品質育種ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-6811
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

日持ち性は花きにおける最も重要な育種目標の一つである。ダリア(Dahlia variabilis)はその豪華な花容と様々な花色を有することから、人気の切り花品目として切り花流通量が増加している。一方でダリアには日持ちが短いという問題があり、消費のさらなる拡大には日持ち性の改良が望まれている。そこで、遺伝的に日持ち性に優れるダリア系統の育成過程の解析に基づいて、良日持ち性ダリアの育種法と日持ち性向上に適した育種素材を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 24品種のダリア切り花の日持ちには、蒸留水、抗菌剤液および品質保持剤であるGLA液(グルコース1%、抗菌剤、硫酸アルミニウムの混合液)を用いたいずれの場合においても大きな品種間差異が認められる(図1)。多くの品種では、蒸留水に比べて抗菌剤液では約1.2倍、GLA液では約1.5倍に日持ちを延長させる効果が認められる。
  • 2014年に図1に示す品種から「ブラックキャット」と「銀映」以外の22品種間で45組合せの品種間交配を行い、得られた後代を第1世代とする。第1世代から日持ち性による選抜とその選抜系統間での交配を、2017~2018年の第3世代まで繰り返し行うと、抗菌剤液に生けた切り花の平均日持ち日数は4.4日から6.1日に増加し、日持ち日数8日以上の良日持ち性個体の出現頻度は1.0%から19.4%に増加する(図2)
  • 第2世代において平均日持ち日数が4.7日未満の4交配組合せは、良日持ち性の「ミッチャン」が育成に使用されていない組合せである(表1)。日持ち日数を指標として選抜した一次選抜系統中の「ミッチャン」の後代の割合は、第1世代の32.8%から、第2世代では89.0%、第3世代では100%と、世代を進めるに伴い増加する(データ略)。さらに、図3の系統512-2、606-46を含め、品種候補として最終選抜した第1世代と第2世代の5系統も、全て「ミッチャン」の後代である(データ略)。したがって、「ミッチャン」にはダリアの良日持ち性の発現に関与する遺伝子が存在し、その良日持ち性は後代に遺伝することが強く示唆される。
  • 本育種法により品種候補として選抜した第1世代系統512-2と第2世代系統606-46の蒸留水における日持ち日数はそれぞれ10.8日、10.0日である。これは切り花用主要品種「ポートライトペアビューティ」の日持ち日数5.4日の約2倍である(図3)。
  • 日持ち性良の「ミッチャン」を育種材料として、切り花の日持ち日数を指標とした選抜と、その選抜系統間での交配を繰り返すことにより、ダリア切り花の日持ち性改良が可能である。

成果の活用面・留意点

  • 最終選抜した第1世代、第2世代の良日持ち性5系統のうち3系統を品種化した。育成した品種・系統は良日持ち性育種の育種素材、日持ち性に連鎖したDNAマーカー開発や老化関連遺伝子研究の材料として活用できる。

具体的データ

図1 切り花用ダリア24品種の日持ち性の品種間差異,図2 ダリア各世代における日持ち日数の分布 抗菌剤(ケーソンCG 0.5mL・L)液に、茎長40cm、最上位緊以外を除去した,図3 蒸留水(DW)における日持ち性の比較,表1 日持ち性による選抜と交配を1回行った第2世代の交配組合せとその親系統の育成に使用された品種

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)
  • 研究期間:2014~2019年度
  • 研究担当者:小野崎隆、東未来(日本大)
  • 発表論文等:Onozaki T. and Azuma M. (2019) Hort. J. 88:521-534