クラウン部局所加温によるガーベラの花茎発生および伸長の促進

要約

ガーベラの短縮茎(クラウン部)の温水チューブならびにステンレステープヒーターによる局所的な加温により、切り花の収穫時期が早まり、総切り花収穫本数および切り花長40cm以上の収穫本数が増加する。クラウン部局所加温により栽培室温を5°C下げても同等の収量が得られる。

  • キーワード:ガーベラ、局所加温、温水チューブ、テープヒーター、開花促進、切り花長
  • 担当:野菜花き研究部門・花き生産流通研究領域・栽培生理ユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-6811
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年の花き生産者における施設加温コストの削減や、社会的な温室効果ガス排出削減の要請により、栽培施設加温温度の低減が求められている。ガーベラは極めて短縮した茎(以下、「クラウン部」)を地表面に形成し、このクラウン部から葉と花が分化・発達する形態的特徴を持つ。ガーベラの植物体の大きさは、栽培施設全体の容積と比較して極めて小さく、施設内室温を加温する栽培において、用いた熱量のうち植物の生育に寄与しているのはごく一部と考えられる。そこで熱量を効率的に用いたクラウン部への局所的な加温が、切り花の生産に与える影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ガーベラ「バナナ」と「キムシー」をコンテナに定植し、クラウン部にナイロン製2連チューブあるいはステンレステープヒーターを密着させる(図1)。温水チューブには33°Cの温水を通水し(温水区)、テープヒーターではクラウン部の最低温度を20°C(テープ低温区)ならびに25°C(テープ高温区)に設定する。栽培室内の気温は最低10°Cに設定する(図2)。
  • 1.において、温水区は23~24°C、テープ低温区で20~24°C、テープ高温区で25~30°Cで推移する。
  • 1.において、局所加温により、切り花収穫時期が早まり、総切り花収穫本数および商品価値のある切り花長40cm以上の収穫本数が増加する(表1)。これらの効果はクラウン部の平均温度に応じて高くなる。(図2、表1)。
  • ガーベラ「キムシー」をコンテナに定植し、温水チューブあるいはテープヒーター1本ないし2本をクラウン部に設置して局所加温を行う。温水の設定温度は33°C、テープヒーター1本および2本区の設定温度は最低25°Cとする。栽培室の最低気温を最低5°C(低室温)、10°C(中室温)および15°C(高室温)の3段階に設定する。温水区とテープ1本区では、クラウン部温度が約20~25°Cに、テープ2本区では25~30°Cで推移する。
  • 4.において、低室温における局所加温諸区と中室温における無局所加温区が、中室温における局所加温諸区と高室温における無局所加温区が、それぞれ同等の収穫時期と切り花本数となる(表2)。テープヒーターの設置本数1本と2本では効果に差がない。
  • 局所加温により、切り花1本当たりの切り花重と頭花径はやや小さくなる(表1、表2)。

成果の活用面・留意点

  • 試験は岩手県盛岡市で、当年夏季新植株を用いた結果である。
  • 本結果に基づいた試算では、盛岡での10月下旬~3月上旬において加温温度を15°Cから10°Cに下げ、温水(35°C設定)あるいはテープヒーター(25°C)により局所加温を行った場合、切り花当たりの投入熱量が温水・テープヒーターともに40%削減される。

具体的データ

表1 2013-2014年試験における局所加温によるガーベラ「バナナ」、「キムシー」の収穫日と切り花品質に対する影響,表2 2014-2015年試験における局所加温によるガーベラ「キムシー」の収穫日と切り花品質に対する影響,図1 温水チューブ(上)とテープヒーター(下)の設置状況,図2 2014年1月4~5日における気温とクラウン部温度の推移

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(再エネ)
  • 研究期間:2013~2015年度
  • 研究担当者:稲本勝彦、木下貴文、山崎博子
  • 発表論文等:稲本ら(2019)園芸学研究、18:243-251