Fusarium solaniによるトルコギキョウ立枯病抵抗性の水耕装置を用いた検定法

要約

Fusarium solaniによるトルコギキョウ立枯病に対する抵抗性は、水温を26°C前後の発病適温域に維持できる水耕装置に定植した苗に針刺し付傷処理による菌接種を行い、接種後1週間毎に発病程度を5段階に評価し、調査終了時の発病株率、発病度を算出する抵抗性検定法により検定できる。

  • キーワード:トルコギキョウ、立枯病、抵抗性検定法、水耕装置、Fusarium solani
  • 担当:野菜花き研究部門・花き遺伝育種研究領域・品質育種ユニット
  • 代表連絡先:
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

近年、フザリウム属菌(Fusarium solani, F. oxysporum)によるトルコギキョウ立枯病が全国の生産地で頻発している。静岡県の生産者団体の被害額を元に算出した国内被害規模は、8.5億円/年と推定される。地床栽培のトルコギキョウでは、いったん発生すると防除が極めて困難であるため、被害が急速に拡大する。本病害は、我が国だけでなく世界中の産地で発生し問題となっているが、検定時の発症が不安定なため、抵抗性の判定が難しい。そこで、将来の抵抗性品種育成や立枯病抵抗性評価による品種選定の情報として活用するため、F. solaniによるトルコギキョウ立枯病抵抗性の水耕装置を用いた検定法を開発する。

成果の内容・特徴

  • フザリウム菌の発病適温域は27~28°Cといわれており、水耕装置を用いることで、根部の温度条件を均一にして、省スペースかつ低コストで抵抗性検定を行うことが可能である(図1)。
  • 本葉3対前後の苗を水耕装置へ定植し、3週間生育させたあと、針刺し付傷処理を行い(図2A,B)、菌濃度1×107~5×107 bud-cells/mLの接種液を、苗の株元に1苗当たり1mLずつ灌注する(図2C)。発病を良好に進行させるため、サーモスタット付きの水中ヒーターを用いて水温を26°C前後の発病適温域に維持する。また、地上部の温度についても20~30°C前後の発病適温域を保つ。
  • 「ミンク」などの極弱品種の発病株率が90%以上となるように調査期間を設定し、接種日から1週間毎に、指数0:無発病、指数1:下位葉の萎れまたは生育不良、指数2:上位葉まで萎れ、指数3:株全体が青枯れまたは全身萎凋、指数4:枯死の5段階で抵抗性評価を行う(図3)。発病株率(指数1以上の株数/調査株数×100)、発病度(Σ{(発病程度別の株数×指数)/(調査株数×4)}×100)を算出して、抵抗性程度を評価する。
  • 本検定法により、F. solani 2菌株(MAFF712388、MAFF712411)に対して強い抵抗性を示す「パピオンピンクフラッシュ」、Eustoma exaltatum大川1号系統(以下、大川1号)のような有望な抵抗性素材が見いだせる(図1,図4)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:民間種苗会社、都道府県、大学等の研究者、都道府県等の普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国で利用可。長野県、静岡県、福岡県へ導入済。
  • その他:
    • マニュアルを作成済みである。
    • 水温や気温を27~28°Cの発病適温域に維持できない夏季は、本検定法における接種試験の実施時期として不適切である。

具体的データ

図1 F. solaniによるトルコギキョウ立枯病の水耕装置を用いた抵抗性検定 2016春試験終了時(接種後35日目)使用菌株:MAFF712388 奥:大川1号 発病株率0%、手前:「紫盃」 発病株率90%,図2 針刺し付傷処理による菌の接種法 A.苗の地際部に2回針刺しする。B.針は茎を完全に貫通させる。C.接種液を灌注する。,図3 調査個体における発病程度の評価法 指数0:無発病、指数1:下位葉の萎れまたは生育不良、指数2:上位葉まで萎れ、指数3:株全体が青枯れまたは全身萎凋、指数4:枯死,図4 F. solaniによるトルコギキョウ立枯病2菌株(MAFF712388, MAFF712411)に対する発病株率、発病度の5品種・系統における差異

その他