ブロッコリー花蕾の大型化によるフローレット増収技術

要約

ブロッコリーの慣行的な収穫基準が花蕾径12cmであるところ、栽培期間を延長して20cm程度まで大型化させて収穫することで、頂花蕾収量3t/10a(全国平均約1t/10a)およびフローレット収量2t/10a(全国平均推定0.5~0.8t/10a)が可能となる。

  • キーワード:加工業務用、ブロッコリー、フローレット、増収
  • 担当:野菜花き研究部門・野菜生産システム研究領域・露地生産ユニット
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

増加する国内の加工業務用ブロッコリー需要に対し、生鮮、冷凍に関わらずほぼ全量を外国産ブロッコリーに依存している現状を脱却し、国産品を導入させるためには、増収や省力化によって生産コストを大幅に下げる必要がある。国内の青果用ブロッコリーの慣行的な収穫基準は花蕾径12cmであるが、加工業務用では切り離した小房状(フローレット)で利用されるため、既存の青果用規格にこだわらず、品質が保たれる限り花蕾を大型化させて収穫することにより増収する可能性がある。そこで、春作と秋作のそれぞれについて高収量品種を特定するとともに、栽培期間の延長によるフローレット増収効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 供試した10品種のうち、「グランドーム」や「クリア」など中晩生~晩生品種で大型化による増収効果が高く、中でも「グランドーム」は作期によらず、大型化によって安定的にフローレット重650gを超える高収量品種である(表1)。
  • 「グランドーム」は可販品質を維持したまま花蕾径20cmに達し(図1)、大型花蕾を収穫する場合、花蕾径12cmで収穫する慣行方法(対照区)より、栽培日数は春作で約5日、秋作で約17日増加するが、頂花蕾収量約3t/10a、フローレット収量約2t/10aに達する(表1)。
  • 大型化による増収効果の高い「グランドーム」と、増収効果の低い「ピクセル」の地上部形態を比較すると、側枝の割合が大きい「ピクセル」に対して、側枝の割合が少ない「グランドーム」は同化産物が頂花蕾に集中しやすい(図2)。
  • 大型化によって地上部全体が大きくなるが、各部位が相似的に増加するのではなく、頂花蕾重の割合(すなわち収穫指数)が増加し、より効率的なブロッコリー生産が可能となる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、2018および2019年のつくば市観音台にある農研機構野菜花き研究部門の試験圃場における春作と秋作それぞれ2回の栽培試験の結果に基づく。
  • 実用化にあたっては、実需者による品質評価に基づいた品種選択、収穫基準の設定が必要である。
  • 青果用の一般的な出荷方法はサイズの揃った花蕾を揃えて箱詰めする必要があるが、加工業務用ではサイズのばらつきが許容されると考えられるため、慣行的な選択収穫にかわって省力的な一斉収穫が可能となる。また、揃えて箱詰めする必要もないため、調製・出荷作業も省力化される。

具体的データ

表1 作期、品種別の花蕾大型化の影響 (10品種中の7品種について),図1 「グランドーム」の(a)12cmと20cmサイズの花蕾および(b)フローレットに分解した様子,図2 収穫物の外観および地上部の部位別新鮮重の変化

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(助成金)
  • 研究期間:2018~2019年度
  • 研究担当者:髙橋徳、佐々木英和
  • 発表論文等:Takahashi M. et al. (2021) Hort. J. 90:75-84