倒れにくいソバ品種「にじゆたか」の根の特徴

要約

倒伏しにくいソバ品種「にじゆたか」は、標準品種「階上早生」に比べて、一次側根数が多く、側根の硬い部分が長く、横への張り出し長も大きく、より水平方向に向いている。また、播種密度が低いほど、これらの形質が強化され倒伏しにくくなる。

  • キーワード:ソバ、倒伏、にじゆたか、根、播種密度
  • 担当:東北農業研究センター・農業放射線研究センター・畑作移行低減グループ
  • 代表連絡先:電話 024-593-5151
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ソバ(Fagopyrum esculentum Moench)は、我が国では主に麺として利用されるポピュラーな作物であるが、収量の全国平均はかなり低い(2015年度は60kg/10a)。低収量の要因のひとつに倒れやすい性質があり、その改善が大きな品種改良の目標となっている。これに対し、農研機構東北農業研究センターでは、2011年に大粒で倒れにくい品種「にじゆたか」を育成している。しかし、倒伏に関わる地上部形質は詳しく調べられているものの、根についてはほとんど調べられていない。そこで、「にじゆたか」の播種密度を変えて栽培し、地上部および根を調査して倒伏しにくい要因を明らかにし、今後の品種育成や栽培技術の改善につなげる。

成果の内容・特徴

  • 「にじゆたか」は「階上早生」に比べて、主根から出た一次側根の数が多く、側根の硬い部分が長く、横方向への張り出し長が大きくより水平方向に向いている(開帳角度が大きい)。これらの4形質が増大すると、側根が土を囲んでできる根塊が大きくなるので、地上部倒伏に抵抗する力が増し、「にじゆたか」は倒伏しにくくなると考えられる。一方、主根長や主根直径には差が認められない(図1、図2、表1、表2)
  • 両品種は播種密度が低いほど、主根が長く、太くなり、側根が増え、硬い側根が長くなり、横に張り出し、水平方向に向き、耐倒伏の方向に強化される(表2)。本試験では実際に倒伏が発生し、階上早生の倒伏が軽減されている(表2の空撮草冠高が高くなる)。
  • 草丈および主茎長径に品種間差はなかったが、過去の試験では、「にじゆたか」の方が大きい場合も報告されている(発表論文3)。

成果の活用面・留意点

  • 耐倒伏性の品種育成や倒伏を軽減する栽培技術の開発では、根の形質が有効な情報になり得ることを示した。
  • 低密度播種は、倒伏軽減効果に加えて子実収量も低下させなかったので有望な技術であるが(表2)、さらなる試験と確認が必要である。なお、標準の播種密度は150粒/m2 である。
  • 試験場所は、福島1ヶ所(夏ソバ)と盛岡2ヶ所(秋ソバ)で、根の調査は計7回実施した。地際の根を調査したのは、その部分の形質が倒伏に大きく影響すると判断したためである。

具体的データ

図1 両品種の根の様子と調査部位?図2 両品種の根の形質比較と播種密度の影響?表1 根の形質の品種間差?表2 播種密度が根の形質、倒伏、子実重に及ぼす影響(盛岡B圃場 播種後70日目)

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2009~2011年度
  • 研究担当者:村上敏文、由比真美子、天羽弘一
  • 発表論文等:
    1)村上ら(2016)根の研究、25(3):63-72
    2)Murakami T. et al. (2012) Comput. Electron. Agric. 89:70-75
  • 3)由比ら(2012)東北農研研報、114:11-21