残稈の埋没性を高めた水田用スタブルカルチ

要約

水田用に開発した作業幅2.5mで5本爪のスタブルカルチは、耕深15cmでは稲株の埋没率70%以上が可能で耕起後の表面の凹凸も小さい。作物収穫後の耕起時に前作の株やわら等の有機物を土中に混和できる。

  • キーワード:スタブルカルチ、耕うん、乾田直播、反転性、埋没性
  • 担当:東北農業研究センター・生産基盤研究領域・作業技術グループ
  • 代表連絡先:電話019-643-3483
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

水田では作物収穫後の耕起作業に、土壌の横移動がなく高速作業が可能なスタブルカルチが一部で普及している。しかし、土壌の反転性や前作残渣の埋没性が劣ることから、大規模経営体では、畑作用の大型輸入機を使用している事例もある。ところが、畑作用の輸入機は、作業機の全長が長い、粘質な日本の水田土壌では爪が刺さりにくい、浅く耕起した際の土壌の反転性が劣る等の問題がある。そこで、日本の水田作に適する15cm程度の深さで浅く耕起しても反転性が高いスタブルカルチを開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発したスタブルカルチは全長3.02m、作業幅2.5m、全高1.39mであり、5本爪で前2、中央やや後方に1、後方に2本を配置している(対照機は前2、後方3本)。また爪の後方にディスクを4個、さらにその後方に砕土ローラーを配置している(対照機も同様)。爪、ディスクの配置、間隔の調整により全長が83cm・全高が16cm小型になっている。また土塊の飛散を防止するために横部に大型のサイドボード、後方の2本の爪に返しを付けているほか、爪の底部での土の切断能力を高めるため各爪のウイングを延長している。
  • 水稲移植栽培後の水田で耕起作業を行い、土壌の反転性の指標となる稲株の埋没率(株埋没率)を対照機と比較すると、低位泥炭土(埴壌土)の水田では耕深、速度に関わらず開発機の方が高い。中間泥炭土(壌土)の水田では耕深15cmとすると開発機の方が高い。また耕深を20cmにすると株埋没率がより高まるが、対照機との差はない。開発機は耕深15cmでも株埋没率が高く、水田で収穫後の稲株をより多く土中に混和することが可能である(図2)。
  • 耕起後の耕うん底面は、開発機、対照機ともおおむね平らであり、開発機と対照機の耕深の変動の差はほぼ同じである(図3)。速度8km/h、耕深15cm設定時の耕起作業後の土の表面の凹凸を計測すると、低位泥炭土、中間泥炭土とも開発機の標準偏差は3cm未満、対照機は3cm以上となり、開発機のほうがばらつきは小さくなる(表1)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:8km/h程度の高速で耕起作業を実施したい農家
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国の大区画圃場を中心に100台以上。
  • その他:適用トラクタは出力70kW以上。2018年12月よりスガノ農機株式会社から販売予定である。

具体的データ

図1 開発した水田用スタブルカルチ;図2 水稲移植栽培後の水田での秋耕における開発機と対照機の株埋没率の比較;図3 耕起後の耕うん底面の凹凸(速度8km/h、
耕深15cm設定時);表1 耕起後の土壌表面の凹凸の標準偏差


その他