大型破砕機と「フレコンラップ法」による破砕穀実の迅速なサイレージ調製方法

要約

破砕速度7t/h以上の能力を持つ大型破砕機を用いて破砕した穀実を、内袋無しのフレキシブルコンテナに投入し、投入口を結束後、牧草用のラッピングマシンを用いてラッピングすることにより、脱気すること無く、迅速に、穀実サイレージが調製できる。

  • キーワード:穀実サイレージ、籾米、トウモロコシ子実、ラッピング、フレコン
  • 担当:東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域・飼料利用グループ
  • 代表連絡先:電話019-643-3556
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

飼料用穀実のサイレージ化は、乾燥コストを削減する技術として有望であり、飼料用米ではすでに、内袋を挿入したフレキシブルコンテナ(フレコン)に封入する手法が普及している。この手法は、米等の集荷組織等が入荷調整をしながら、屋内のプラント型施設内で長期間をかけて少量ずつ処理することを想定した手法であるため、施設を持たない畜産農家が、短期間に大量に入荷する穀実飼料を屋外で迅速に調製する手法としては導入しづらい。そこで、畜産農家が所有する作業機を活用して、屋外で迅速にサイレージ化する新たな調製法を開発する。

成果の内容・特徴

  • フレコンラップ法は、これまでの穀実サイレージ調製で行われてきた「手作業での脱気密封作業」を機械化することで省力化したものであり、破砕した穀実を内袋無しのフレコンに投入し、その投入口を結束したあと、脱気処理することなく、牧草用のラッピングマシンを用いてラッピングフィルムでラッピングする手法である(図1)。
  • フレコンラップ法と破砕能力7t/h以上の大型破砕機(飼料用米破砕機U500T、タカキタ)を組み合わせることにより、収穫時に大量に入荷される穀実を迅速にサイレージ調製できる。この体系は「破砕工程」(破砕:必要に応じて加水→フレコンへの詰込→満杯フレコンの移動→一次集積)と、「ラッピング工程」(フレコンの結束→フレコンのラッピング→ラッピング済みフレコンの二次集積)の2工程からなる(図1)。
  • 「破砕工程」の所要人数と作業能率は、1000Lフレコン使用時には4-5名(機械作業3名)、7-10t/h、500Lフレコン使用時には6名(機械作業3名)、約7t/hである(表1)。
  • 上記作業に続いて実施する「ラッピング工程」の所要人数と作業能率は、1000Lフレコン使用時には3-4名(機械作業2名)、17-20t/h、500Lフレコン使用時には3名(機械作業2名)、6-8t/hである(表1)。
  • 全工程の作業能率は、「破砕工程」が全て終了した後に「ラッピング工程」を開始した場合、1000Lフレコン使用時に、5-6t/h、500Lフレコン使用時に3-4t/hである(表1)。
  • フレコンラップ法を用いて調製した穀実サイレージの発酵品質は、籾米、トウモロコシともに、プロピオン酸、酪酸の少ない乳酸発酵型の良質なものである。また、開封時のカビの発生は認められず、屋外での長期保存も可能である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:飼料生産コントラクター、耕畜連携コントラクター、畜産農家営農集団
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国・100カ所
  • その他:子実用トウモロコシ栽培耕種農家からの問い合わせあり
  • ラッピングマシンはフレコンの直径(500L;90cm、1000L;110cm)に対応したものを使用する。畜産農家が所有する既存機(ラッピングマシン等)を除外し、新規導入作業機(破砕機等)のみを固定費とした場合の試算では、トウモロコシ子実サイレージ調製に係る費用は、100ロ-ル製造した場合で現物1kg・12円程度である。

具体的データ

図1.大型破砕機とフレコンラップ法を用いた迅速サイレージ調製体系;表1.大型破砕機とフレコンラップ法を用いた穀実サイレージ調製の実証試験結果;表2.フレコンラップ法を用いて調製したサイレージの発酵品質


その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)、その他外部資金(27補正「地域戦略プロ」)
  • 研究期間:2015~2017年度
  • 研究担当者:嶝野英子、魚住順、河本英憲、神園巴美、出口新、内野宙、宮路広武、長谷川啓哉
  • 発表論文等:魚住ら(2018)日本草地学会誌、64:180-188