無破砕籾米の簡易サイレージ調製技術

要約

無破砕籾米をフレコンもしくはカップ型サイロを用いて一晩浸水することで水分を30%に調整でき、翌日に排水後、フレコンはフレコンラップ法で、カップ型サイロは専用蓋で密閉することでこれまで不可能であった無破砕籾米サイレージを簡易に調製できる。

  • キーワード:無破砕、籾米サイレージ、フレコンラップ法、カップ型サイロ
  • 担当:東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域・飼料利用グループ
  • 代表連絡先:電話019-643-3556
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

現在普及している籾米サイレージの調製体系はすべて、破砕後に密閉する体系である。この体系で最初に行う破砕作業は、サイレージ調製時に最も時間を要する工程であるため、作業の効率化には、能率の高い破砕機の導入が不可欠であるが、高額であるため導入できる農家は多くはない。一方、破砕を省略してサイレージ化し、給与時に小型機種で逐次破砕することができれば、高額な破砕機の導入や、破砕に要する人員を配置することなく、効率的に収穫時の調製作業が可能となるが、この体系は確立されていない。そこでこの体系の実用化を阻んできた「無破砕籾を発酵適水分に調整して密閉する技術」を開発する。

成果の内容・特徴

  • フレコンラップ法による調製:無破砕籾米を内袋付きフレキシブルコンテナ(フレコン)に投入後、投入口を結束し、結束部近くに開けた穴から籾米が十分浸るまで水を注入する。一晩放置後、フレコンの下部(地際)に穴を数か所開けて排水する。2時間放置後、脱気することなく牧草用ラッピングマシンを用い、ラッピングフィルムでフレコンをラッピングし、サイレージに調製する(図1)。ラッピングは牧草ロールと同様の6層巻で行う。
  • カップ型サイロ(容量1000L、ポリエチレン製(商品名:ごえもんサイロ))による調製:無破砕籾米をポリエチレン製サイロに投入後、籾米が十分浸るまで水を注入する。一晩放置後、サイロ下部の栓を開放し残水を排水する。2時間放置後、サイロをビニール蓋で密閉し、サイレージに調製する。ガスが発生し、ビニール蓋が膨満した際には、その都度サイロ下部の栓を開放し、ガスを排出する(図1)。
  • 上記方法で無破砕籾米を浸漬することにより、上記方法のどちらのサイロ内のどの部位においても水分含量が30%以上となり、発酵に十分な水分を籾米に加水することができる(表1)。また、その発酵品質は水分の高かった下部においてもpHが4.2を下回り、V-スコアが90以上の良質なものとなる(表1)。
  • 上記方法で調製されたサイレージの発酵品質は乳酸菌無添加でも乳酸発酵型のサイレージとなり、V-スコアが90以上の良質なものとなる(表2)。いずれのサイレージにおいても、開封時に目視によるカビの発生は認められなかった。
  • 農家の庭先で野積み状態の籾米10tを機械作業者1名、補助員2名で、フレコンラップ法(1000Lフレコン)によりサイレージ調製した場合の作業能率は、バケット付きローダーでの籾米の詰め込み工程が3.8t/h、ラッピング工程が4.6t/hとなり、19個のフレコンラップ(平均重量665kg)が調製できる。その他の作業時間は注水(注入速度1300L/h)に6時間、吸水に一晩、排水に2時間である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:飼料生産コントラクター、畜産農家営農集団
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国・100カ所
  • その他:2017年度フレコンラップ法での無破砕籾米調製実績は3ha、資材費は、フレコンラップ法が1500円/個(フレコン、内袋、結束バンド)、ごえもんサイロ(最低10年使用可)が4万円/基(クラスター事業利用時)。

具体的データ

図1. 無破砕籾米サイレージ調製体系の概要;表1.フレコンラップ法による無破砕籾米サイレージの部位別発酵品質;表2.無破砕籾米サイレージの発酵品質


その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(27補正「地域戦略プロ」)
  • 研究期間:2015~2017年度
  • 研究担当者:嶝野英子、魚住順、河本英憲、神園巴美、出口新、内野宙
  • 発表論文等:嶝野ら(2018)日本草地学会誌、64:175-179