フルチアセットメチル乳剤による大豆品種の初期薬害

要約

大豆2~4葉期のフルチアセットメチル乳剤処理による大豆品種の初期薬害程度は温暖地では小さいが、寒冷地では強く生じることがある。初期薬害程度には品種間差異があり、また、他の農薬との混用で、初期薬害が助長されることがある。

  • キーワード:フルチアセットメチル乳剤、初期薬害、大豆品種、収量、混用
  • 担当:東北農業研究センター・水田作研究領域・水田作グループ
  • 代表連絡先:電話0187-66-1221
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

近年、大豆作において、生育期に全面茎葉処理できる唯一の一年生広葉雑草用除草剤ベンタゾン液剤(商品名:大豆バサグラン液剤)の効果が劣る雑草が蔓延して問題になっており、その対策技術が期待されている。現在、新規選択性茎葉処理剤フルチアセットメチル乳剤(成分含有率2%)の普及に向けた取り組みが全国で行われているが、本剤の大豆初期生育への薬害が懸念されている。そこで、フルチアセットメチル乳剤による大豆品種の初期薬害の特徴を明らかにし、本剤の実用化に向け、適切な使用方法に関する情報を提供する。

成果の内容・特徴

  • 大豆2~4葉期のフルチアセットメチル乳剤処理により、散布時の展開葉には褐変、展開中の葉には縮葉の薬害症状を生じる。関東以西の温暖地ではその影響は小さいが、寒冷地では落葉に至る強い薬害を生じることがある(表1)。
  • フルチアセットメチル乳剤による大豆品種の薬害程度は以下のように分類される(表1)。
  • 1)薬害程度大:著しく生育が抑制され、枯死株も発生する「操大豆」、「新2号」。
    2)薬害程度中:一部の小葉が落葉し、生育抑制が生じる長葉品種の「ナンブシロメ」、「すずほのか」。
    3)薬害程度小:落葉に至ることが少ないその他品種。ただし、まれに落葉が生じ、生育抑制が生じる場合がある。試験を行い、表1に掲載していない品種への薬害は全て軽微であり、薬害程度中以上の品種はない。
  • 寒冷地では、処理2週間後の大豆生育抑制率が20%程度の場合、約8%減収する(図1)。
  • 以上のことから、寒冷地でフルチアセットメチル乳剤を処理する場合は、登録内低薬量での処理、生育量を確保できる栽培法の導入等の対策を講じる必要がある。
  • 他の農薬との混用によって薬害症状を助長する場合があり(図2)、混用した場合に安全性が確認されていない農薬との混用は行わない。

普及のための参考情報

  • 普及対象:大豆生産者、農業生産技術普及指導機関
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:北海道を除く全地域
  • その他:
  • 1)フルチアセットメチル乳剤は2018年2月に農薬登録され、2018年の大豆作から使用できる。
    2)フルチアセットメチル乳剤の効果には草種間差異があり、ヒユ科雑草、ナス科雑草などの効果が高い草種が発生する圃場で使用する(41804_02_普及)。
    3)現時点では、気温等の気象条件と薬害程度との明瞭な関係は確認されていない。

具体的データ

表1 フルチアセットメチル乳剤による大豆品種の初期生育への影響;図1 初期薬害と収量との関係;図2 薬剤混用による薬害助長事例


その他