ヘアリーベッチを用いたリビングマルチ栽培の飼料用大豆への雑草防除効果
要約
ヘアリーベッチのリビングマルチは、飼料用大豆の雑草防除手段として有効だが、防除効果は雑草の種類により異なり、オオイヌタデやシロザが優占する圃場では効果が大きく、ホソアオゲイトウやイネ科雑草が優先する圃場では効果が小さい。
- キーワード:雑草防除、飼料用大豆、リビングマルチ、ヘアリーベッチ
- 担当:東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域・飼料生産グループ
- 代表連絡先:電話019-643-3556
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
タンパク質源飼料は、乳牛飼養に不可欠な飼料である。自給可能なタンパク質源飼料としては、アルファルファが最も広く利用されているが、本草種は、国内に多くみられる酸性土壌への適応性が低く、栽培面積は広がっていない。日本の土壌への適合性が高い飼料用大豆は、アルファルファに代わるタンパク資源飼料として有望であるが、登録農薬がないという制約がある。そこで、ヘアリーベッチをリビングマルチとして利用することにより、除草剤を用いずに大豆の雑草を防除する作付体系を開発する。
成果の内容・特徴
- トウモロコシ収穫後の9月下旬にヘアリーベッチを播種し、翌年の6月上旬にベッチの立毛中に大豆を不耕起播種した後、ベッチの再生抑制のためのディスクハロー掛けを行ったあと放任し、大豆を10月に収穫する体系である(図1)。
- オオイヌタデに対する防除効果は極めて大きく、リビングマルチ栽培下ではほとんど発生しなくなる。シロザに対する効果はやや低いが、実用水準の防除効果は期待できる。これらの雑草が優先する圃場では、耕起・除草栽培と同等の乾物収量がえられる(図2)。
- ホソアオゲイトウやイヌビエ等のイネ科雑草に対する効果は小さく、これらが優占する圃場では、実用的な防除効果は得られない(図2)。
- ヘアリーベッチのリビングマルチ栽培下では、大豆の茎葉が過繁茂となり豆果の割合が低下する。このため、収穫物の繊維成分が増加し、タンパク質含量と脂肪含量が低下する(表1)。
成果の活用面・留意点
- ディスクハロー掛けは、植生が反転しない程度のギャング角で行う。また、実施時期は大豆播種後1週間以内とする。
- 大豆の不耕起播種は、コールター切削式の不耕起播種機を用いる。部分耕方式の播種機は利用できない。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2011~2017年度
- 研究担当者:魚住順、内野宙、出口新、嶝野英子
- 発表論文等:魚住ら(2018)日本草地学会誌、64:81-90