トラクタで利用できる浅層暗渠施工器の最適な施工技術
要約
浅層暗渠施工器はトラクタでの牽引作業のみで、深さ50cm程度に本暗渠を施工できる器械である。事前の心土破砕作業により85PS以上のセミクローラ型トラクタ、または事前に溝を掘削することにより50PS程度のトラクタで暗渠の施工ができる。
- キーワード:暗渠排水、トラクタ、営農排水技術、浅層暗渠施工器、事前掘削
- 担当:東北農業研究センター・生産基盤研究領域・作業技術グループ
- 代表連絡先:電話019-643-3483
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
水田の排水機能を良好な状態で維持するには、本暗渠の導入が不可欠である。本暗渠の多くは公共事業等で整備され、農家が営農作業として簡便に整備する手段が皆無であったため、トラクタで利用できる浅層暗渠施工器が開発された(2014年度東北農業研究成果情報https://www.naro.affrc.go.jp/org/tarc/seika/jyouhou/H26/kiban/H26kiban009.html)。しかし、浅層暗渠施工器を利用するには、85PS以上のセミクローラ型トラクタが必要であったため、より低出力のトラクタで施工できることが強く求められていた。そこで広く普及している50PS程度のトラクタでも本暗渠の施工が可能な手法を開発し、多くの農家が利用できる暗渠施工技術や施工した暗渠の管理技術を提供する。
成果の内容・特徴
- 浅層暗渠施工器は暗渠溝開削部、暗渠管導入部、もみ殻疎水材投入部、掘削深制御部、暗渠管リールおよびリール台で構成される。トラクタの牽引作業のみで、管底の深さで50cm程度に本暗渠(暗渠管φ50mm)を施工できる器械である(図1)。浅層暗渠施工器では、暗渠溝の開削(溝幅8cm)、暗渠管の敷設およびもみ殻疎水材投入作業を一工程で行うことができる。
- 暗渠施工位置を心土破砕、または溝掘り機により暗渠管埋設のガイドとなる溝を事前に掘削することにより、暗渠管埋設時の牽引抵抗が低減され、予定する埋設深さまで掘削できるようになる。予定埋設深さまで心土破砕を行った場合は、85PS以上のセミクローラ型トラクタで暗渠の施工が可能であり(図2)、溝掘り機により30~40cmの溝を掘削した場合は、より低出力の50PS程度のトラクタにより暗渠の施工が可能である(図3)。
- 心土破砕による方法では、およそ心土破砕の施工深さに暗渠管が埋設される(図2)。溝掘り機による方法では、溝の底から15~20cm程度まで、掘削部分の土壌の固さにあまり影響されることなく、浅層暗渠施工器による掘削が可能となり、50cm程度に暗渠管を埋設できる(図3)。
普及のための参考情報
- 普及対象:暗渠排水の導入および維持管理を検討している農家、生産組織、土地改良区など。
- 普及予定地域、普及予定面積、普及台数等:排水機能が劣る水田、畑作地域を中心に数十台の導入が想定される。
- その他:製作は2社(宮城県、熊本県)で可能となっている。器械の構造が簡素であるため、地域の鉄工所で製作されるケースもあり、現在10台の浅層暗渠施工器が製作されている。50PS程度のトラクタによる利用技術の詳細については、マニュアル「トラクタで利用できる浅層暗渠施工器」の改訂版に掲載される。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2010~2018年度
- 研究担当者:冠秀昭、関矢博幸、大谷隆二、道合知英(宮城古川農試)、小泉慶雄(宮城古川農試)
- 発表論文等: