栽培イチゴの四季成り性と連鎖したDNAマーカー

要約

DNAマーカーs2430859は、8倍体である栽培イチゴの同祖染色体の中から四季成り性遺伝子座と連鎖したDNA断片を特異的に増幅する。約150bpの増幅DNA断片の有無で、アガロースゲル電気泳動により四季成り性個体を高精度かつ簡便に判別できる。

  • キーワード:イチゴ、四季成り性、一季成り性、DNAマーカー、マーカー選抜
  • 担当:東北農業研究センター・畑作園芸研究領域・施設野菜・育種グループ
  • 代表連絡先:電話050-3533-1833
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

四季成り性イチゴの品種育成において、四季成り性の有無を早期に判別できるDNAマーカーは非常に有効である。既存のマーカーは、8倍体である栽培イチゴの同祖染色体の中から単一の主働遺伝子座に支配されている四季成り性の遺伝子型を判別するのにDNAシーケンサーを必要とする、利用できる交配組合せが限定的であるなどの課題があり、それらの点を改良した検出法の開発が求められている。そこで、四季成り性遺伝子座と密接に連鎖し、簡便な分析手順で効率的な選抜を可能とするDNAマーカーを開発する。

成果の内容・特徴

  • DNAマーカーs2430859を用いると、同祖染色体の中から四季成り性遺伝子と連鎖したDNA断片のみが特異的に増幅されるため、約150bpの増幅DNA断片の有無で、四季成り性個体と一季成り性個体をアガロースゲル電気泳動により簡便に判別できる(図1)。
  • マーカーs2430859は、四季成り性遺伝子座と遺伝的距離3.0~6.0cMで連鎖し、既報の選抜マーカーとは四季成り性遺伝子座をはさんで反対側に座乗している(図2)。
  • 四季成り性品種と一季成り性品種の交配により育成された7つのF1集団を分析した結果、s2430859の増幅DNA断片の有無と表現型の適合率は94.4%~100%の値をとり、平均値は96.8%と高精度である(表1)。
  • 91品種(四季成り性27品種、一季成り性64品種)を分析した結果、81品種においてs2430859の増幅DNA断片の有無と表現型が一致したことから、これらの品種間での交雑集団における四季成り性個体の選抜には本マーカーが利用できる(表2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:イチゴを対象とする育種研究機関、種苗会社等
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:マーカーs2430859を用いた選抜法は特許出願中のため、利用には許諾が必要である。これまでに計5件(公設試験場、種苗会社)に許諾している。アガロースゲル電気泳動で分析が可能な本マーカーは、DNAシーケンサーを保有していない研究室でも利用可能であるため、国内の幅広い育種現場への普及が期待される。
  • その他:既存のマーカーのうち、FxaACA02I08C(図2)は四季成り性遺伝子座に密接に連鎖しているが、四季成り性遺伝子が座乗していない同祖染色体からもDNA断片が増幅されるため目的の多型の検出にDNAシーケンサーを必要とし、また、適用可能な交配組合せにも制限がある(2015年度研究成果情報参照http://www.naro.affrc.go.jp/org/tarc/seika/jyouhou/H27/yasaikaki/H27yasaikaki014.html)。

具体的データ

図1 DNAマーカーs2430859の電気泳動像,表1 マーカーs2430859の遺伝子型と表現型との対応,図2 栽培イチゴの四季成り性と連鎖したマーカー,表2 91品種におけるマーカーs2430859の増幅断片の有無

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(資金提供型共同研究)
  • 研究期間:2012~2018年度
  • 研究担当者:本城正憲、塚崎光、由比進、小石原弘明(トヨタ自動車)、西村哲(トヨタ自動車)
  • 発表論文等:
    • Honjo M. et al. (2020) Hort. J. 印刷中
    • 小石原ら「イチゴ属植物の四季成り性関連マーカーとその利用」特開2016-174602(2016年10月6日)