汎用循環式乾燥機によるトウモロコシ子実の乾燥および水分推定手法

要約

米麦大豆汎用の循環式乾燥機を用いたトウモロコシ子実乾燥は小麦設定など40~50°Cの通風温度とすることで、穀温が40°Cを上回ることなく乾減率1~2%/hで乾燥可能である。仕上水分の確認には、トウモロコシ仕様の静電容量式水分計が望ましいが、大豆仕様でも換算により可能である。

  • キーワード:トウモロコシ子実、循環式乾燥機、乾燥、水分、静電容量式水分計
  • 担当:東北農業研究センター・農業放射線研究センター・営農再開グループ
  • 代表連絡先:019-643-3483
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

水田利用の促進および国産濃厚飼料の増産を目的に、水田輪作の一環として子実用トウモロコシを生産することが考えられる。また、実際に現地において、水稲農家がトウモロコシ子実を生産し、米麦大豆用の循環式乾燥機での乾燥を試みる事例が散見されるようになった。しかし、国内においてトウモロコシ子実を生産した事例および乾燥に関する知見や技術の蓄積は少ない。
ここでは、トウモロコシ子実の米麦大豆用の汎用循環式乾燥機による乾燥試験と市販水分計による測定値と絶乾法による水分の比較を行い、現状でトウモロコシ子実を生産する際に参考となる情報を提示する。

成果の内容・特徴

  • 汎用循環式乾燥機でトウモロコシ子実は、仕上水分15%以下まで乾燥可能である。小麦設定の場合は通風温度が40~50°Cで乾減率は1~2%/h程度となる(図1)。また、穀温は40°Cを上回らず、熱損傷の点から問題は無い。除水量あたりの消費熱量は5.5~6.5MJ/kgで他の試験事例と同等である(表1)。
  • トウモロコシ用として販売されている静電容量式水分計について、A社(国内)製とB社(米国)製の2機種を供試した結果によると、両者とも実用上十分な性能と判断できるが、国内製のほうが安定した値である(図2、表2)。
  • 静電容量式と大豆用乾燥機内蔵金属ロール式(国内C社製)については、両者ともトウモロコシ用でないため、表示水分は絶乾法との差が大きい。そのため、乾燥終了の判断など、トウモロコシ子実水分の測定に利用する場合には近似式による換算値による必要がある(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 本情報は、国内農家の慣行の設備を用いて、トウモロコシ子実の乾燥流通を試行する技術開発段階での活用を想定している。
  • 一般的に乾燥作業では通風温度が高いと乾減率が大きくなり、汎用循環式乾燥機では、一般的に通風温度は小麦設定の場合が最も高い。これは、籾設定の場合は胴割れ防止、大豆設定の場合はしわ粒防止のため、乾減率を低く抑える必要があるので、通風温度は低めに設定されていることによる。そこで、飼料用として迅速な乾燥が必要なトウモロコシ子実では、比較的、通風温度が高い小麦設定での作業が望ましい。なお、穀温49°を超えると発芽に影響が出る可能性があるため、種子用では留意する必要がある。
  • 乾燥機に米麦用水分計を付けた状態では、水分計にトウモロコシ子実が入らず、エラーにより乾燥機が停止する場合がある。また、大豆水分計を付け、大豆設定とした場合、しわ粒防止機能で点火しない場合がある。これらの場合は水分計を取外し、小麦設定でタイマー運転を行うなどの対応が必要である。

具体的データ

表1 乾燥試験結果,図1 汎用循環式乾燥機によるトウモロコシ子実乾燥経過(表11に対応),図2 各水分計の表示値と絶乾法の比較(表1の水分計と対応),表2 絶乾法(135°C-10g粒-24h)と各水分計の表示値の比較と近似式*

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(地域再生)
  • 研究期間:2016~2018年度
  • 研究担当者:金井源太、篠遠善哉、山下善道
  • 発表論文等:金井ら(2018)農業施設、49(2):86-92