園地単位全量購入契約のもとで成立するジュース加工向けリンゴ栽培の特徴

要約

ジュース加工向けリンゴ生産では、長期的な園地単位の全量購入契約のもと、樹上で行う結実管理作業や収穫・調製作業を大幅に削減することが可能となる。また、高樹高化により、収量及び収益性を著しく向上させることができる。

  • キーワード:ジュース加工、リンゴ、全量購入契約、省力管理、収益性
  • 担当:東北農業研究センター・生産基盤研究領域・技術評価グループ
  • 代表連絡先:電話029-838-8874
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

リンゴ作経営は労働生産性が低く管理面積に限界があることが課題である。しかしリンゴ作経営および加工向けリンゴ生産量が減少する中で、大規模の加工リンゴ専用園の成立条件が模索されている。そこで、ジュース加工向けリンゴ生産により高い収益を確保している事例分析から栽培技術と販売の仕組み、経営成果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • リンゴは用途によって求められる商品の基準が異なる。生食用リンゴは大きさ、形状、キズ・障害の有無、着色、糖度、硬度など様々な項目で選果基準が設定されるのに対し、ジュース加工向けリンゴは腐敗果が取り除かれる程度である(表1)。
  • 従って、ジュース加工向け生産では、自然授粉、無摘果、無袋、無摘葉という作業体系で結実管理作業を大幅に省力化することができる。しかしながら、通常、落果リンゴは出荷が認められず収穫の省力化は難しい。
  • そのため、ジュース加工向け生産の技術体系は、搾汁メーカーとの落果リンゴの出荷を容認する園地単位の長期生産契約のもとで採用される(表2)。これにより揺すり落としによる収穫や生産者段階での選果の省略を可能とし、収穫・調製作業も大幅に省力化できる(表3)。
  • さらに、脚立に上って行う樹上での結実管理作業および収穫作業をなくすことで、主幹形で密植のまま高樹高化することができ、多収が可能となる(表3)。
  • 結実管理作業や収穫・調製作業の大幅削減による省力化、および高樹高化による多収により、部門労働時間当たり高い生産量(62.9kg/hr)が得られる(表4)。これはリンゴ生産面積3.0ha以上の2004年~2015年の統計値平均10.5kg/hrの6倍という数値であり、より少ない労働で多くの生産量が得ることができることを示す。また事例では部門労働時間当たり付加価値も1,957円/hrと高い水準が得られている。

成果の活用面・留意点

  • 加工リンゴ生産に取り組む経営や産地に対して、栽培管理や販売方法への活用が期待される
  • 本成果を含む加工リンゴの生産方式の詳細は、農林水産省園芸作物課ホームページhttp://www.maff.go.jp/j/seisan/engei/ryutu_kako/pdf/siryou21.pdfに掲載している。
  • 本生産方式は、常雇用、固定装備を一部水田作、畑作と共用することにより成立している。
  • 枝を強く揺らして落果させるため、台木には喬木性台木が想定される。

具体的データ

表1 リンゴの用途と選果項目,表2 ジュース加工向けリンゴ(紅玉)の契約内容例,表3 ジュース加工向けリンゴ栽培の特徴,表4 ジュース向け加工リンゴ生産の経営指標

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2018年度
  • 研究担当者:長谷川啓哉
  • 発表論文等:長谷川(2018)農村経済研究、35(2):17-28