煮豆に適する寒冷地向けの黒大豆品種「黒丸くん」

要約

「黒丸くん」は、東北地域における成熟期が晩生で、大粒の黒大豆で煮豆加工に適し、倒伏程度が少なく、最下着莢節位高が高いことから機械化栽培に向いている。

  • キーワード:黒大豆、東北地域、機械化適性、大粒、煮豆加工適性
  • 担当:東北農業研究センター・水田作研究領域・大豆育種グループ
  • 代表連絡先:電話0187-75-1084
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

黒大豆は伝統的食品の黒豆煮豆などに利用されている。主な品種としては、近畿・中国地域の「丹波黒」及び北海道地域の「いわいくろ」が挙げられる。一方、東北地域では、栽培地域が限定される煮豆用で扁平の「黒平豆」や、主に納豆に用いられる小粒の「黒千石」等の在来種はあるものの、広域で栽培される大粒の黒豆煮豆用の品種はない。また、これらの在来種は蔓化や病虫害に弱いなどの欠点も抱えている。
そこで、寒冷地向けの栽培しやすい大粒煮豆用の黒大豆品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「黒丸くん」は、1996年、ダイズモザイクウイルス抵抗性の「ギンレイ」を母、大粒の黒大豆系統の「刈系529号」を父として行った人工交配から育成された品種である。
  • 東北地域における成熟期は、"やや晩"の「玉大黒」より4、5日遅い"晩"である(表1)。
  • 「玉大黒」に比べて、生育中は蔓化や倒伏が少なく、熟莢は弾けにくく、一番下の莢が付く位置(最下着莢節位高)は同等に高いので、コンバイン収穫しやすいなどの機械化栽培に適している(表1)。
  • 「玉大黒」に比べて、百粒重がやや軽めだが、子実重も同等かそれ以上であり、しわ粒の発生が少なく、外観品質が良い(表1)。
  • 大粒で加工した時の光沢や色が良く、煮豆用に適している(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 栽培適地は東北地域中南部等である。
  • 山形県の一部大豆生産者で在来品種の置き換えが予定されている等、普及見込み面積は10ha。
  • ダイズモザイクウイルス病およびダイズシストセンチュウに対する抵抗性が十分でないので、これらの病害虫が蔓延する地域での栽培は避ける。

具体的データ

表1 「黒丸くん」の主な生育特性,図1 「黒丸くん」の煮豆官能評価結果(2005、2006年産の平均)

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(地域再生)
  • 研究期間:1996~2018年度
  • 研究担当者:菊池彰夫、島村聡、加藤信、平田香里、河野雄飛、湯本節三、髙田吉丈、島田信二、境哲文、島田尚典、髙橋浩司、足立大山、田渕公清、中村茂樹
  • 発表論文等:
    • 菊池ら「黒丸くん」品種登録出願公表第31148号(2016年8月31日)
    • 菊池ら(2019)農研機構研究報告 東北農研、121:27-38