東北地域における春まきタマネギ栽培を安定化する生産技術体系

要約

東北地域における春まきタマネギ栽培に適した品種、施肥基準、播種・定植期、ネギアザミウマや腐敗病被害の低減対策、雑草対策等の要素技術を体系的に活用することで、水田作経営体による大規模なタマネギ生産において5t/10a以上の収量安定が可能となる。

  • キーワード:大規模露地野菜、春まきタマネギ、機械化体系、病害虫防除、施肥基準、東北地域
  • 担当:東北農業研究センター・畑作園芸研究領域・露地野菜グループ
  • 代表連絡先:電話 019-643-3547
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

タマネギは生産量の多い露地野菜品目であるが、生産地は北海道・佐賀県・兵庫県の特定地域に集中しており、出荷地域の切り替え期となる夏季(7・8月)には国産品の供給力が一時的に低下する。業務加工用として青果輸入量の多いタマネギであるが、国産品への実需ニーズは強く、夏季の供給力向上が求められている。これまでの研究開発で、東北地域で春まき栽培によりタマネギ生産した場合、夏季の出荷が可能であることを示し技術普及を進めたが、作付けが広がる中で腐敗性病害の多発や暫定的な施肥基準といった栽培管理上の問題が顕在化している。そこで、東北地域の春まきタマネギ栽培において10アールあたり5t以上の収量を安定的に得ることを目標に、施肥基準や病虫害防除等の要素技術を開発するとともに、地域の公設試と連携してそれらを体系化・実証し、水田転換畑における土地利用型経営体に向けた導入の効果等を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 地域に適した品種を利用し、標準的な栽培暦(図1)に基づき、各地域の環境条件に合わせた適切な播種期・定植期を設定している。
  • タマネギ養分吸収量(図2)および施肥試験に基づき、本作型の施肥量の基準をN:P2O5:K2O=15:15:15kg/10aとする。
  • 本作型の主要な減収要因であるタマネギ腐敗病対策として、細菌性病害対象の殺菌剤を倒伏開始後も収穫前まで散布し、かつ、ネギアザミウマに効果の高い殺虫剤を散布する防除体系(防除モデル)を示す(図3)。雑草対策は、土壌処理剤の定植直後処理(1回目)とその40日後処理の2回処理による防除を基本とする。
  • 岩手県の水田作経営体における作付体系の導入実証では、10アールあたり5.2tの収量が得られ、タマネギ導入前と比べ経営体の総所得が約5割増加すると見込まれる(表1)。
  • 実証した技術体系は、東北地域における春まきタマネギ栽培で生産の安定化や新規作付けに活用できるマニュアルとして公表される。

普及のための参考情報

  • 普及対象:東北地域のタマネギ生産者、タマネギ作導入に関心のある土地利用型農業生産者、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:東北地域・300ha。出荷時期(7・8月)の輸入量(約5万トン)の3割程度置き換えが見込まれる。
  • その他:雑草・病害虫防除体系に示した農薬は登録内容に従って使用すること。記載した登録内容が変更されることがあるので、使用前に薬剤容器のラベル等で確認する。

具体的データ

図1 東北地域における春まきタマネギ栽培暦(標準),図2 東北地域の春まきタマネギの養分吸収量,図3 東北地域の春まきタマネギ栽培における防除モデル,表1 大規模経営体への導入モデル

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(28補正「経営体プロ」)
  • 研究期間:2016~2019年度
  • 研究担当者:
    室崇人、工藤一晃、永坂厚、長谷川啓哉、上杉龍士、逵瑞枝、塚﨑光、青木和彦、奥聡史、永田修、戸上和樹、笹原和哉、磯島昭代、山崎浩道、村山徹、山崎篤、山本岳彦、横田啓(岩手農研)、吉田徳子(岩手農研)、坂口昌啓(岩手農研)、田代勇樹(岩手農研)、熊谷初美(岩手農研)、鈴木誠一(宮城農園研)、澤里昭寿(宮城農園研)、高橋勇人(宮城農園研)、伊藤和子(宮城農園研)、本庄求(秋田農試)、鵜飼秀樹(秋田農試)、菅原茂幸(秋田農試)、佐藤健介(秋田農試)、山崎紀子(庄内産地研)、藤島弘行(庄内産地研)、吉田佳充(福島農総セ)、笠井友美(福島農総セ)、大越聡(福島農総セ)
  • 発表論文等:
    農研機構(2020)「東北地域における春まきタマネギ栽培マニュアル」(2020年2月25日)