東北太平洋沿岸地域の大規模土地利用型経営におけるキャベツ機械化栽培体系

要約

東北太平洋沿岸地域における水稲主体の土地利用型経営体に導入可能なキャベツの機械化栽培体系とそれを支援する技術体系である。キャベツ収穫機を取り入れた本技術体系を導入することにより、農閑期の労働力が活用され、構成員一人当たりの農業所得が向上する。

  • キーワード:大規模露地野菜、寒玉キャベツ、機械化体系、加工業務用野菜
  • 担当:東北農業研究センター・畑作園芸研究領域・露地野菜グループ
  • 代表連絡先:電話 019-643-3547
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

東北太平洋沿岸地域では、農地の集約化に伴い大規模な土地利用型経営体が増加するとともに、収益性向上のため露地野菜の導入が期待されている。有望な品目の一つとして、水稲作や大豆作との作業競合が少なく、機械作業による軽労化が可能で、需要の高い土地利用型品目である加工業務用キャベツ(寒玉系キャベツ)があげられる。収穫機の市販化により一連の作業を機械で行う栽培体系が可能となりつつある一方、水稲主体の経営体へキャベツ機械化栽培体系を導入した事例はなく、生産現場では水稲作等との作業競合や収益性への懸念が根強い。
そこで本研究では、水稲主体の大規模土地利用型経営体を対象に、キャベツの機械化栽培体系の導入及びそれを支援する個別要素技術を実証することにより、水稲作・大豆作の農閑期の労働力の有効活用による農業所得の向上効果を示す。

成果の内容・特徴

  • 東北太平洋沿岸地域でのキャベツ夏どり作および秋冬どり作は、水稲作や大豆作の農繁期と作業が重ならず、作業分散・労働時間の平準化が可能である(表1)。また、キャベツ収穫機を含めた機械化栽培体系の導入により各種作業の軽労化、他の野菜品目との機械の共用も可能になる(図1)。
  • キャベツ機械化栽培体系の導入を支援する個別要素技術として、初期生育の安定化・生育斉一性の向上に資する長期無追肥育苗技術とうね内部分施用技術、機械収穫の作業効率の向上につながる深植え定植技術に加え、かん水や排水対策等(図2)を組み合わせることでキャベツ生産の安定化が可能である。
  • 80ha規模の水稲主体の大規模な土地利用型経営体の実証データをもとに試算すると、キャベツ等の機械化栽培体系を7ha以上導入することにより、農閑期の構成員の遊休労働力を活用することができ、構成員一人当たり農業所得は1,408千円増加する(表2)。
  • 実証した技術体系は、水稲主体の大規模な土地利用型経営体を対象としたキャベツの導入や生産の安定化に活用できるマニュアルとして公表されている。

普及のための参考情報

  • 普及対象:大規模な土地利用型経営体、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:東北太平洋沿岸地域、特に宮城県沿岸部における水稲主体の大規模土地利用型経営体を対象としてキャベツの作付面積50haを想定し、普及を進めている。
  • その他:収益性は実証試験に基づく試算値であり、経営体の所有する機械・設備類などにより異なる。

具体的データ

図1 キャベツ機械化栽培体系における主要な機械作業,図2 キャベツ機械化栽培体系の導入を支援する個別要素技術,表2 キャベツ機械化栽培体系の導入前後の収益性

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(地域再生)
  • 研究期間:2013~2018年度
  • 研究担当者:
    山本岳彦、松尾健太郎、山崎篤、鈴木誠一(宮城農園研)、澤里昭寿(宮城農園研)、関根崇行(宮城農園研)、鹿野弘(宮城農園研)、小池修(宮城農園研)、伊藤和子(宮城農園研)、遠藤柳子(宮城農園研)、屋代幹雄、田中宏明、佐々木英和、宮永豊司(ヤンマー株式会社)
  • 発表論文等: