「人・農地プラン」推進に向けた農地集約化支援ガイドブックによるPDCAの実践
要約
担い手への農地集約化を進めるための手順や取り組みのポイントを整理した農地集約化支援ガイドブックによるPDCAサイクルを実践することで、農地集約化の必要性や効果、取り組みの手順、留意点を見える化し、生産現場における農地集約化を推進する。
- キーワード:人・農地プラン、農地中間管理機構、進行管理、農地集約化、ガイドブック
- 担当:東北農業研究センター・生産基盤研究領域・技術評価グループ
- 代表連絡先:電話 029-838-8874
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
農政は農地中間管理機構と「人・農地プラン(以下、プラン)」を用いて、担い手への農地の集積・集約化の取組を進めているが、プランを用いたPDCAサイクルを回すためには、地域内での話し合いを行い、必要に応じてプランを改定することが喫緊の課題となっている。そこで、2018年度の研究成果情報「農地集約化に向けた人・農地プランの策定・改定のためのPDCAサイクル」で示した手順や留意点を『農地集約化支援ガイドブック』を用いて、現場関係者(農業委員・農地利用最適化推進委員(以下、推進委員)、行政・中間管理機構・農業会議・JA職員等)の実践を促し、市町村単位での実質的なプラン作りや都道府県単位での農地集約化支援に関するマニュアル策定を推進する。
成果の内容・特徴
- 農地集約化支援ガイドブック(図1)では、担い手への農地集約化の必要性や効果について、農研機構の研究成果等を引用して解説するとともに、Step1:農地集約化に向けた推進体制作り、Step2:地権者等への働きかけとプラン作り、Step3:プランの実践と進行管理の各取り組みのポイントを段階的かつ網羅的に示し、最終的にはプランの継続的な改定につなげることとしている(図2)。
- 岩手県T市農業委員会の事例では、ガイドブックで示した手順やポイントに基づき独自の取り組みを展開している。そこでは、年度当初に推進チームがプラン作りやプランの改定を実施するための重点活動アイデアを農業委員と推進委員に提案してもらい全員でスコア評価し、その結果に基づき活動項目の優先順位を付けて、課題と当初の計画(Plan)を設定する。そして、次年度に向けて年度末に実績(Do)分析(Check)、改善後の計画(Act)を整理し、各地区の進行管理表を作成している(図3)。
- その結果、T市農業委員会では取り組みを展開する前と比べて地域での話し合いが3回から9回に増えるとともに、農業委員や推進委員が自ら担当する地区の進行管理表に基づき農地集積・集約化支援の活動を展開したことで、プラン中心経営体である担い手への農地集積が新規に増加し、約6.5haの遊休農地の解消に繋がっている。
- なお、全国の本ガイドブックの配布者を対象としたアンケート結果から(n=138/198)、農業委員会や市町村を中心に「地権者等への働きかけとプラン作り」や「人・農地プランの実践と進行管理」が良好な評価を得ており(図4)、プラン推進の現場での利活用が期待できる。
普及のための参考情報
- 普及対象:プラン作りに取り組む農業委員、推進委員、市町村行政担当部課、農地中間管理機構、都道府県農業会議、JA担当部課、農業革新支援専門員、農業普及指導員
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:現状3県での活用を確認済。今後全国的な活用を展開。岩手県の例では県作成の『地域農業マスタープランの実質化・実践マニュアル』に反映され、全市町村の農業委員や推進委員を対象とした農地集約化に関する各種研修会のテキストとして活用されている。
- その他:本ガイドブックは、https://fmrp.rad.naro.go.jp/publish/から、簡易版・詳細版ともにダウンロードして利用できる(2019年4月22日公開)。なお、本サイトでは「人・農地プラン」推進に関連する担い手育成関連成果も併せて紹介している。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2016~2019年度
- 研究担当者:安江紘幸、高橋明広、細山隆夫、西村和志、松本浩一
- 発表論文等: