早生で多収の直播栽培向き良質良食味水稲品種「ちほみのり」

要約

「ちほみのり」は、東北地域中部では"かなり早"熟期に属する粳種である。耐倒伏性が強く、多収で、いもち病に強く、良質・良食味である。直播栽培においても倒伏は少なく多収である。

  • キーワード:イネ、多収、早生、良食味、直播
  • 担当:東北農業研究センター・水田作研究領域・水稲育種グループ
  • 代表連絡先:電話 029-838-7441
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

米価が下落している状況の中で、米穀業界関係者からは一定の水準の食味・品質を有する安価な米が求められている。農業経営者の所得を確保するために一定水準の食味・品質を有し収量性が向上した品種、また、栽培コストの削減、栽培の省力化に対応するために直播栽培に適した品種の要望が高まっている。そこで、耐倒伏性に優れ、多収で良質・良食味の特性を有し、直播栽培にも適した水稲品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「ちほみのり」は、2005年に、直播向き・多収・良食味の「奥羽382号」(「萌えみのり」)を母とし、多収で、いもち病抵抗性に優れた「青系157号」を父とする交配組合せから育成された品種である。
  • 育成地における出穂期、成熟期は「あきたこまち」よりやや早く、「まっしぐら」並で、"かなり早"に属する(表1)。
  • 稈長は「あきたこまち」より短く、穂長はやや短く、穂数はやや多い。草型は"偏穂数型"である(表1)。
  • 耐倒伏性は"強"で、移植栽培、直播栽培いずれにおいても「あきたこまち」より明らかに倒伏が少なく、直播栽培では「まっしぐら」より倒伏が少ない(表1、図1)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子型は"Pia,Pii"と推定される。葉いもち抵抗性は"強"、穂いもち抵抗性は"やや強"である。障害型耐冷性は"中"である。縞葉枯病には"罹病性"である。白葉枯病抵抗性は"やや弱"である。穂発芽性は"やや易"である(表1)。
  • 移植栽培における精玄米重は「あきたこまち」より約9%多収で、直播栽培における精玄米重は「あきたこまち」より約24%多収である(表1)。
  • 玄米の外観品質、炊飯米の食味は「あきたこまち」並で"上中"である(表1)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:水稲生産者、水稲生産法人等
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:東北以南。2015年に秋田県の産地品種銘柄に指定され、2018年に約800ha作付けされた。2019年に福島県、新潟県の産地品種銘柄に指定され、3県で約1,500ha作付けされた。新潟県の種子対策品種に採用され、種子の許諾先は16件あり、各地で普及している。
  • その他:成果の内容・特徴は東北農業研究センター(秋田県大仙市)における成績で、区分は寒冷地中部における基準に基づく。耐冷性は不十分であるので、冷害の発生しやすい地域での作付は避ける。やや穂発芽しやすいため、刈り遅れに注意する。倒伏のおそれがあるので、極端な多肥栽培は避ける。縞葉枯病に罹病性であり、発病地域での栽培は防除を徹底する。

具体的データ

表1 「ちほみのり」の特性概要,図1 「ちほみのり」の草姿(直播・標肥区、2013年)

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2005~2019年度
  • 研究担当者:太田久稔、横上晴郁、津田直人、藤村健太郎、山口誠之、福嶌陽、梶亮太、中込弘二、片岡知守、遠藤貴司(古川農試)
  • 発表論文等:
    • 太田ら「ちほみのり」品種登録第26435号(2018年1月24日)
    • 太田ら(2016)東北農研報、118:37-48