水稲の主要な発育ステージを面的に把握し、予測する情報発信システム

要約

メッシュ農業気象データと水稲統計情報から、東北地方の幼穂形成期、出穂期、成熟期、刈取適期とそれぞれの平年差を面的に把握し、予測する手法である。これまでの水稲の面的出穂期予測を拡張し、主要な発育ステージとその平年差の面的分布図を追加した情報発信システムである。

  • キーワード:水稲、発育ステージ、刈取適期、1kmメッシュ、メッシュ農業気象データ
  • 担当:東北農業研究センター・生産環境研究領域・農業気象グループ
  • 代表連絡先:電話 019-643-3414
  • 分類:過年度普及成果情報

背景・ねらい

より適切な時期と場所で農作業を実施する農業技術の実現を目指して、メッシュ農業気象データと水稲統計情報から、東北地方の出穂期の面的分布を計算する方法を開発し(2017年度普及成果情報, https://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/tarc/2017/17_060.html)、より高精度な出穂期予測の改良を行った(2018年度研究成果情報)。適切な時期、場所で水管理、農薬散布、追肥などを実施するためには、出穂期以外の他の発育ステージを面的に把握し、予測することが必要である。本研究では、水稲の面的出穂期予測を拡張して、幼穂形成期、成熟期、刈取適期などの主要な発育ステージを面的に把握し、予測するモデルと情報発信システムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、水稲の面的出穂期予測から得られる出穂日を基準にして、主要な発育ステージを推定する。水稲の生殖生長期は、日長の影響をあまり受けないため、温度のみの反応とみなすことができる。そこで、発育ステージは、出穂日からの積算気温に対応すると仮定する。幼穂形成期から出穂日までの積算気温は、600°C日、出穂日から成熟期までの積算気温は、1000°C日に設定する。今日の発育ステージは、出穂日から今日までの積算気温で表す(図1)。
  • 本システムは、面的出穂期予測の推定出穂日から刈取日を推定する。その際、作柄表示地帯21地点×23年の合計483データを用いて算出した出穂日から刈取日までの平均発育速度と平均気温の一次回帰式を使用する。刈取日の二乗平均平方根誤差は3.5日であり、刈取日(平均、10月3日)の標準偏差5.3日、出穂日から刈取日までの日数(平均、57日)の標準偏差3.8日よりも精度が高い。
  • 東北農業研究センターのホームページの東北農研の農業気象情報から、水稲の面的出穂期予測と面的発育ステージ予測にアクセスできる(http://www.headmesh.affrc.go.jp/)。トップページは、主要な発育ステージとその平年差の分布図を表示し、国土地理院地図を背景にした拡大・縮小機能を持つ地図表示、過去日と過去年の分布図を確認できる過去表示がある(図2)。
  • 面的発育ステージ予測は、アクセス制限機能と申し込み機能により、農業関係者のみが、主要な発育ステージとその平年差の面的分布図を閲覧することができる(図3)。
  • 今日の発育ステージ、主要な発育ステージとそれらの平年差の分布図は、1日1回、自動更新されるので、その時点における発育ステージの面的な把握と予測を確認することができる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:農業生産者、試験研究機関、農業普及機関、行政機関、その他
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:ホームページ上でモニター会員を募集し、登録人数は、30名(内、農業生産者16名、研究者6名、その他8名)、訪問数は、約3000件である。
  • その他:モニター会員からのアンケート調査の結果を踏まえて、システムの改善を進める。この面的発育ステージ予測は、冷害などの農業気象災害が発生する地帯を把握し、予測するための基盤技術になる可能性がある。

具体的データ

図1 面的発育ステージ予測のフローチャート,図2 地図表示の拡大・縮小機能,図3 2019年の主要な発育ステージ(上)とその平年差(下)のメッシュ図

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2019年度
  • 研究担当者:川方俊和、長谷川利拡、屋比久貴之、熊谷悦史、大久保さゆり
  • 発表論文等:
    • 川方ら、特願(2019年1月28日)
    • 農研機構「水稲の面的出穂期予測」(2019年5月21日更新)
    • 川方(2019)東北の農業気象、63:1-12
    • 川方(2017)職務作成プログラム「水稲の面的出穂日予測の計算プログラム」、機構-L08