水田転換畑でのプラウ耕によるトウモロコシの倒伏軽減効果

要約

黒ボク土の水田転換畑においてプラウ耕で栽培したトウモロコシはロータリ耕と比較して、根系の株支持力を示す引倒し力が高く、耐倒伏性に優れる。グライ土の水田転換畑において、台風による倒伏程度はロータリ耕よりプラウ耕で少ない。

  • キーワード:倒伏、トウモロコシ、プラウ耕、水田転換畑、台風
  • 担当:東北農業研究センター・生産基盤研究領域・栽培技術グループ
  • 代表連絡先:電話 019-643-3483
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、台風等によるトウモロコシの倒伏被害が報告されており、倒伏を軽減する栽培管理技術が求められている。また、水田の有効・高度活用および国産濃厚飼料の増産という背景から水田転換畑での子実用トウモロコシ栽培が広がりつつある。水田転換畑では、ロータリ耕が慣行法であるが、大規模経営体を中心にプラウ耕の導入が進みつつある。
そこで、本研究では、黒ボク土とグライ土の水田転換畑においてロータリ耕体系と比較して、プラウ耕体系で栽培したトウモロコシの倒伏関連形質および台風に伴う倒伏被害について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 黒ボク土およびグライ土ともに土壌貫入抵抗値は土壌深さ5cmにおいてプラウ耕で急激に増加し、土壌深さ15cmまでプラウ耕で大きい(図1a、b)。グライ土における乳熟期の土壌深さ0-10cmの根長密度はロータリ耕よりプラウ耕で大きい(図1c)。したがって、ロータリ耕よりプラウ耕で地耐力が高く、プラウ耕では土壌硬度が急激に増加する0-10cmに根を多く伸長させることにより地上部を支える力が向上する。
  • 黒ボク土において、引倒し力はロータリ耕よりプラウ耕で大きく、稈長および着雌穂高に差はみられない(表1)。また、黒ボク土における倒伏はロータリ耕よりプラウ耕で少ない。グライ土において、引倒し力、稈長および着雌穂高に顕著な差はみられないが、倒伏はロータリ耕よりプラウ耕で少ない(表1)。黒ボク土の水田転換畑においてプラウ耕で栽培したトウモロコシの耐倒伏性はロータリ耕より優れる。
  • 黒ボク土において、倒伏と引倒し力には負の相関関係が認められる(図2)。
  • 2017年のグライ土では、台風18号(最大瞬間風速24.2m/s)通過後の倒伏程度はロータリ耕よりプラウ耕で顕著に少ない(図3a)。坪刈り収量(水分15%)では両耕起法とも同程度(ロータリ耕:1124kg/10a、プラウ耕:1170kg/10a)であるが、汎用コンバインによる収穫時において、ロータリ耕よりプラウ耕で頭部損失による収穫ロスが少ないため(図3b)、全刈り収量(水分15%)はロータリ耕(608kg/10a)よりプラウ耕(701kg/10a)で多い。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、水田転換畑でトウモロコシを栽培する際の基礎資料として活用できる。
  • 本成果は、黒ボク土(岩手県盛岡市、東北農業研究センター)と細粒質グライ土(岩手県花巻市、農家圃場)において、水稲後の転換畑で実施した。細粒質グライ土の圃場には暗渠が施工されており、排水対策として額縁明渠、サブソイラを施工した。
  • プラウ耕は、チゼルプラウ耕(黒ボク土:耕深20cm(2016-2017年)もしくは15cm(2018年)、グライ土:耕深15cm)で粗耕起後にパワーハロー(黒ボク土、グライ土:耕深5cm)で表層を砕土する体系である。ロータリ耕の耕深は、黒ボク土では20cm(2016-2017年)もしくは12-13cm(2018年)、グライ土では12-13cmである。
  • トウモロコシ品種について、2016-2017年の黒ボク土では「34N84」、「TX1241」、「きみまる」、「P2088」、「SH3786」、「KD641」を用いて行い、2018年の黒ボク土と2017年のグライ土では「34N84」を用いた。裁植密度について、2016-2017年の黒ボク土およびグライ土では7400本/10a、2018年の黒ボク土では8000本/10aである。引倒し力と倒伏には品種間差が認められた。
  • 引倒し力と倒伏個体数の関係は土壌により異なる可能性がある。

具体的データ

図1 2017年における土壌貫入抵抗値(a、b)およびグライ土における乳熟期の土壌深さ別の根長密度,表1 倒伏関連形質,図2 2017年の黒ボク土における倒伏個体数と引倒し力の関係,図3 2017年グライ土における台風通過後の圃場の様子(a)およびロータリ耕圃場における収穫時の様子(b)

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)
  • 研究期間:2016~2017年度
  • 研究担当者:篠遠善哉、松波寿典、大谷隆二、丸山幸夫(筑波大)
  • 発表論文等: