カスミカメ2種による斑点米被害リスクは水稲品種に関わらず割れ籾率によって評価できる
要約
カスミカメ2種による斑点米被害は、水稲品種に関係なく割れ籾率が高くなると増加し、2種間の加害能力に違いが認められない。このため、気象条件や害虫密度が同程度であれば、水稲品種や加害するカスミカメ種に関わらず、割れ籾率から斑点米被害発生リスクを相対的に評価できる。
- キーワード:斑点米カメムシ類、品種、割れ籾率、被害リスク評価
- 担当:東北農業研究センター・生産環境研究領域・病害虫グループ
- 代表連絡先:電話 019-643-3483
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
斑点米カメムシによる被害は割れ籾率によって変化し、割れ籾は斑点米被害に影響する主要因として知られる。気象条件によって割れ籾率は変化するが、籾の割れやすさも品種によって違うため、斑点米被害が発生するリスクは品種ごとに異なる。割れ籾率を使って斑点米被害リスクを評価できれば、品種ごとの殺虫剤散布回数を設定するための有力な指標となるが、多数の品種を扱った割れ籾率と斑点米被害の関係は過去に検討されていない。そこで水稲の主要害虫であるカスミカメ2種(アカスジカスミカメとアカヒゲホソミドリカスミカメ)について、室内で成虫の放飼実験を行い、品種に関係なく斑点米被害と割れ籾率に関連があるかどうか検討した。
成果の内容・特徴
- 関東、北陸、東北地域で栽培される8品種(「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」、「あきたこまち」、「はえぬき」、「つがるロマン」、「ササニシキ」、「むつほまれ」、「ゆめあかり」)を温室内でポット栽培し、袋掛けしたイネの穂に雄雌1対の成虫を放飼して3日間加害させた場合、斑点米率に対して割れ籾率と害虫種、その交互作用を解析すると、割れ籾率のみが斑点米率に影響する(表1、図1)。
- 上記最適モデルでカスミカメ種の影響は検出されない(表1)ことから、カスミカメ2種の成虫は同程度の加害能力を持つことが示唆される。
- 斑点米被害のうち、頂部被害は割れ籾率と関係ない(表1、図1)。
- 本研究で扱った8品種について、品種に関わらず割れ籾率が高くなるにつれてカスミカメ2種による全斑点米被害・側部斑点米被害発生リスクは高まる(図1)。
成果の活用面・留意点
- 本成果は特定の温度条件でポット栽培したイネを用い、害虫密度を一定とした室内試験の結果であり、野外条件での被害は気象条件や害虫密度によって変動する。
- 野外においてアカスジカスミカメは主に成虫が水田に侵入して玄米を加害するのに対し、アカヒゲホソミドリカスミカメは侵入した成虫と(次世代の)幼虫が加害する。本研究では成虫の被害のみを調査したため、アカヒゲホソミドリカスミカメによる被害は過大評価になる可能性がある。
- 本成果より、地域で栽培されている品種について割れ籾率を調査し、斑点米率を推定できることから、斑点米被害リスクを評価する際に活用できる。また、アカスジカスミカメが加害種の場合、斑点米被害リスク評価から殺虫剤散布回数を設定するための指標としての活用が期待できる。
- カスミカメ2種の成虫において割れ籾率と斑点米被害に違いが認められなかったため、加害するカスミカメ種が異なる地域、もしくはカスミカメ2種が混発する地域の間でも被害発生リスクを比較できる。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2018~2019年度
- 研究担当者:田渕研、櫻井民人
- 発表論文等:田渕、櫻井(2019)応動昆、63:181-188