水田転換畑のレッドトップ草地造成時にフェストロリウムを混播すると早期に草地化が可能
要約
寒冷地の水田転換畑を耐湿性と永続性に優れるレッドトップの放牧草地にする場合、耐湿性と初期生育に優れるフェストロリウムを混播することにより、草地化初期の生産量確保と雑草抑制効果がある。放牧利用の継続により優占草種はフェストロリウムからレッドトップへ遷移する。
- キーワード:水田転換畑、耐湿性、フェストロリウム、放牧、レッドトップ
- 担当:東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域・飼養管理グループ
- 代表連絡先:電話 019-643-3556
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
水田転換畑を放牧草地化する場合、高い土壌水分が問題となるが、耐湿性の高い草種であれば生育できる。しかし、排水性の悪い水田転換畑では地耐力も低く、放牧牛の踏圧も牧草を衰退させる大きな要因である。一方、レッドトップは耐湿性が高く、匍匐茎による優れた栄養繁殖能力を持つことから被度が一旦低下しても回復し、水田転換畑での放牧条件下で高い永続性を示す。しかし、初期生育が遅いため、草地化初期は生産量が低く雑草の侵入も多い。そこで、耐湿性が高く初期生育に優れるフェストロリウム「東北1号」をレッドトップと混播した場合の植生遷移と乾物生産量への効果を寒冷地水田転換畑の放牧条件下で明らかにする。
成果の内容・特徴
- 7月に水田転換畑の既存植生を除草剤(グリホサートカリウム塩)で枯死させた後、9月に耕起し、レッドトップ3kg/10aとフェストロリウム「東北1号」1kg/10aを播種すると、両草種とも良好な定着を示し、翌春は初期生育に優れるフェストロリウムが優占する植生となる(図1)。
- フェストロリウムの混播により、播種翌年5月の放牧利用前の牧草乾物生産量はレッドトップの単播より96%高くなり、雑草の乾物生産量は15%に抑制できる(図2)。
- 1年目の放牧利用によりレッドトップとフェストロリウムの植生は一旦衰退し裸地の被度が67%まで増加するが、休牧期間を設けることで、匍匐茎による栄養繁殖能力を持つレッドトップの被度が回復し、裸地の被度も21%まで減少する(図1)。
- フェストロリウムの混播による増収効果は利用2年目の春まで続き、雑草の抑制効果は利用2年目の夏まで継続する(図2)。
- レッドトップとフェストロリウムの混播植生は放牧利用と休牧期間の繰り返しを継続するにつれて、優れた栄養繁殖能力を持つレッドトップの被度が増加し(図1)、牧草の乾物生産量はレッドトップを単播した場合と等しくなっていく(図2)。
- フェストロリウムを混播した場合でも、利用3年目の春にはレッドトップの被度が74%に達し、永続性が高く、省力的な管理法で維持できるレッドトップ優占草地が成立する(図1)。
成果の活用面・留意点
- 排水性の悪い寒冷地の水田転換畑を放牧草地化する場合に活用できる。
- レッドトップ優占草地は省力的な管理法で維持できるので、肉用種繁殖雌牛を水田転換畑で放牧する場合に有効である。
- 混播草地の優占種がフェストロリウムからレッドトップへ遷移する期間は放牧頭数、放牧期間、施肥量によって一定ではない。
- 本試験は晴天時の土壌水分が64.9(%)の寒冷地の水田転換畑(面積37a)において、黒毛和種繁殖雌牛2頭を放牧して得られた結果である。基肥、早春ならびに各放牧期間終了後に化成肥料で窒素・リン酸・カリを各3.0・1.5・1.5 kg/10a施用している。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2007~2019年度
- 研究担当者:池田堅太郎、山口学
- 発表論文等:池田、山口(2020)日草誌、66(1):17-20