縞葉枯病抵抗性で良質良食味の水稲新品種候補系統「中国209号」
要約
「中国209号」は、温暖地西部では"やや早"熟期の粳系統である。「朝の光」よりも高温登熟性に優れ、良食味・多収であり、縞葉枯病に抵抗性である。群馬県の二毛作地帯を中心に主食用品種として作付けされる。
- キーワード:イネ、玄米品質、良食味、縞葉枯病抵抗性
- 担当:西日本農業研究センター・水田作研究領域・水稲育種グループ
- 代表連絡先:電話 084-923-4100
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
温暖地東部の米麦二毛作地帯では二毛作に適する水稲品種として「朝の光」等が作付けされてきたが、玄米の外観品質が安定せず、特に、登熟期間が高温で経過すると著しく品質が低下することが問題となっている。このため、「朝の光」熟期で、登熟期間が高温で経過しても玄米品質が「朝の光」より優れ、良質良食味で縞葉枯病抵抗性を備えた品種が求められている。
成果の内容・特徴
- 「中国209号」は、縞葉枯病抵抗性を有する良質良食味品種の育成を目標として、「中国186号」と「中系2826」(後の「中国190号」)との交配後代より育成した粳系統である(表1)。
- 育成地での普通期移植栽培における出穂期および成熟期は、いずれも「朝の光」より3日早い。群馬県前橋市における出穂期および成熟期は「朝の光」よりそれぞれ1日および2日遅く、館林市では出穂期は1日早く、成熟期は1日遅い。温暖地西部では"やや早"、温暖地東部の群馬県では"やや晩"の熟期に属する(表1)。
- 「朝の光」と比較して、稈長は長く、穂長はやや短い。穂数は育成地および前橋市では少なく、館林市ではやや少ない。草型は"中間型"である(表1)。
- いもち病真性抵抗性遺伝子"Pii"を持つと推定され、圃場抵抗性は葉いもちが"中"、穂いもちが"やや強"である。縞葉枯病には"抵抗性"で、白葉枯病抵抗性は"やや強"である。穂発芽性は"やや難"である。耐倒伏性は"強"である(表1)。
- 玄米重は育成地では「朝の光」と同程度、前橋市および館林市ではそれぞれ6%、4%多い(表1)。玄米千粒重は育成地では21.6g、群馬県では23g前後であり、粒大は"中"である(表1)。
- 「朝の光」と比較して、玄米の外観品質は育成地ではやや優れ、群馬県の普通期植では同程度であり、早植栽培では優れる(表1、図1)。群馬県で出穂後20日間の日平均気温が27度を超えた場合には「朝の光」よりも玄米外観品質が優れる(図2)。
- 食味は育成地および群馬県で良食味品種の「あきさかり」および「ゴロピカリ」並に良好である(表1、表2)。
普及のための参考情報
- 普及対象:温暖地の生産者。
- 普及予定地域・普及予定面積:群馬県で奨励品種(認定)として採用予定である。群馬県内の二毛作地帯を中心に、2017年度は数ha、数年後には200ha、将来的にはさらに普及が進む見込みである。
- その他:育成地での高温登熟性が"中"程度であるため、今後の気象条件の変動に注意する。
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2005~2016年度
- 研究担当者:出田収、重宗明子、中込弘二、石井卓朗、松下景、春原嘉弘、前田英郎、 飯田修一
- 発表論文等:出田ら、品種登録出願第31957号(2017年6月26日)