ブラインシュリンプ卵は天敵タイリクヒメハナカメムシの代替餌として利用できる
要約
捕食性天敵タイリクヒメハナカメムシの飼育・生産は、通常高価なスジコナマダラメイガ卵が用いられるためコストがかかる。安価な代替餌ブラインシュリンプ卵は、スジコナ卵で飼育する場合と同等のタイリクヒメハナカメムシの生存と産卵を可能とする。
- キーワード:タイリクヒメハナカメムシ、代替餌、ブラインシュリンプ卵、天敵飼育
- 担当:西日本農業研究センター・生産環境研究領域・虫害管理グループ
- 代表連絡先:電話 084-923-4100
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
環境保全型農業の推進には、天敵の利用拡大が重要な課題となる。捕食性天敵タイリクヒメハナカメムシOrius strigicollisは、アザミウマ類の重要な天敵として施設栽培で利用されている。しかし、タイリクヒメハナカメムシの生産コストは高価なスジコナマダラメイガ卵を利用するため、非常に高くなっている。そのため、タイリクヒメハナカメムシの利用拡大のためには、生産コストの削減が必須である。そこで、安価なブラインシュリンプ卵Artemia salinaの乾燥耐久卵が代替餌として利用できるかを評価する。
成果の内容・特徴
- ブラインシュリンプ卵を与えたタイリクヒメハナカメムシ幼虫(図1)の発育日数は、スジコナマダラメイガ卵より長くなるが、その差は1日程度である(表1)。幼虫の生存率は2つの餌間で差がない。
- ブラインシュリンプ卵を与えた成虫の羽化後20日までの生存曲線は、スジコナマダラメイガ卵と同等である(データ省略)。総産卵数および産卵前期間にも差がない(表2)。
- タイリクヒメハナカメムシはブラインシュリンプ卵を餌として発育繁殖可能であり、スジコナマダラメイガ卵での増殖と同等であることから、代替餌として利用できる。
成果の活用面・留意点
- ブラインシュリンプ卵の販売価格はスジコナマダラメイガ卵の約1/5であるため、生産工程に組み込めばコストを軽減できる。
- ブラインシュリンプ卵は有殻と無殻があるが、無殻は胚が硬化しているのでタイリクヒメハナカメムシが吸汁できないため、有殻を利用する。
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2011~2015年度
- 研究担当者:三浦一芸、世古智一、安部順一朗、西森敬晃(広島大)
- 発表論文等:Nishimori T. et al. (2016) Appl. Entomol. Zool. 51(2):321-325