シソ科植物に含まれるロスマリン酸は筋細胞のエネルギー消費を促進する

要約

シソ科植物に含まれるポリフェノールであるロスマリン酸は、培養筋細胞のグルコースおよび脂肪酸の利用を促進する働きを持つ。その作用機序としては、エネルギーセンサーの役目を果たすタンパク質AMPKを活性化することにあると推定される。

  • キーワード:シソ科植物、ロスマリン酸、筋細胞、エネルギー消費
  • 担当:西日本農業研究センター・作物開発利用研究領域・特産作物利用グループ
  • 代表連絡先:電話 029-838-8011
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

社会問題となっている生活習慣病の予防には全身のエネルギー管理が有効である。骨格筋は最大のエネルギー消費器官であることから、骨格筋におけるエネルギー消費の促進は生活習慣病の予防につながることが期待できる。青シソ、赤シソ、エゴマなどのシソ科植物は近畿中国四国地域における重要な地域特産作物である。シソ科植物の茎葉にはポリフェノールの一種であるロスマリン酸が含まれており、抗アレルギー作用や抗酸化作用などを有することが知られている。本研究ではロスマリン酸の培養筋細胞におけるエネルギー消費促進効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • シソ科植物の茎葉に含まれるポリフェノールであるロスマリン酸(図1A)は、C2C12筋細胞のエネルギー(脂肪酸および糖)消費を促進する(図1BおよびC)。
  • ロスマリン酸はC2C12筋細胞のエネルギー消費に関連する遺伝子であるLCAD(長鎖アシルCoA脱水素酵素)、UCP3(脱共役タンパク質3)およびGLUT4(グルコース輸送担体4)の遺伝子発現を増強させる(図2)。
  • エネルギーセンサーとして知られるAMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)は、α?、β?、γ?のサブユニットで構成されるヘテロ三量体であり、α?サブユニットのリン酸化がAMPK活性化の指標となる。ロスマリン酸は、AMPKα?および下流のACC(アセチルCoAカルボキシラーゼ)のリン酸化を促進する傾向があることから、エネルギー消費の増加にはAMPKシグナル経路の活性化が関与していることが推定される(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本結果は培養細胞を用いた実験の結果であり、マウス、ヒトにおいても骨格筋におけるエネルギー消費促進効果があるかどうかは今後詳しく調べなければならない。
  • ロスマリン酸は、筋細胞のエネルギー消費増加を介して肥満などに由来する生活習慣病の予防に役立つ可能性が期待できる。

具体的データ

図1 ロスマリン酸による筋培養細胞のエネルギー消費促進効果?図2 ロスマリン酸によるエネルギー消費関連遺伝子の発現制御?図3 ロスマリン酸によるAMPK経路の活性化

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2013~2016年度
  • 研究担当者:阿部大吾、齋藤武、野方洋一
  • 発表論文等:Abe D. et al. (2016) Food Sci. Technol. Res. 22(6):779-785