多収で製粉性に優れる日本めん用の小麦新品種「びわほなみ」
要約
小麦「びわほなみ」は「農林61号」より多収で、製粉性に優れる日本めん用小麦である。子実灰分が低く、子実へのカドミウム蓄積が少ない。アミロース含有率がやや低く、ゆでめんの粘弾性となめらかさが優れる。
- キーワード:小麦、多収、製粉性、製めん適性、子実カドミウム
- 担当:西日本農業研究センター・水田作研究領域・麦類育種グループ
- 代表連絡先:電話029-838-7410
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
「農林61号」や「シロガネコムギ」などの温暖地の日本めん用小麦品種は、製粉性や製めん適性が輸入小麦銘柄と比べて劣るため、その改善が求められている。また、これらの品種は、近年、収量が低下傾向にあることから収量性の向上が求められている。現在、小麦の子実カドミウム濃度の国内基準値は設定されていないが、リスク低減の観点から、低蓄積性品種の育成が望まれている。そこで、多収で製粉性や製めん適性に優れ、子実カドミウム低蓄積性の日本めん用小麦品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 小麦「びわほなみ」は早生で製粉性が優れる「中国153号」を母、多収で製粉性がかなり優れ、子実カドミウム低蓄積性の「北見81号(後の「きたほなみ」)」を父とする人工交配の後代から育成された品種である。
- 育成地では「農林61号」と比べて出穂期は3日、成熟期は2日早い。稈長はやや短く、穂長は同程度で、耐倒伏性は強い(表1)。
- 「農林61号」と比べて収量は1割程度多く、容積重は大きい。千粒重と外観品質は同程度である(表1)。
- 穂発芽性は"中"、赤かび病抵抗性は"弱"である(表2)。
- 「農林61号」と比べて、子実蛋白質含量はやや低い。子実灰分が低く、子実カドミウム濃度が低い(表3、表4)。
- 製粉性は日本めん用の輸入小麦銘柄であるASWと比べて、製粉歩留、ミリングスコアが高く、優れる。アミロース含量はやや低く、"やや低アミロース"である。粉の色相は、明度がやや低いが、赤色みが低く、黄色みがやや高い。「農林61号」と比べて、製粉性はかなり優れ、色相は優れる(表3、表4)。
- 製めん評価はASWと同程度である。「農林61号」と比べて、ゆでめんの色、外観、粘弾性、なめらかさが優れる(表4)。
普及のための参考情報
- 普及対象:小麦生産者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:栽培適地は温暖地西部の平坦地。滋賀県において奨励品種採用予定で、普及予定面積は2022年産で3000ha。
- その他:赤かび病に弱いため、適期防除を行う必要がある。子実蛋白質含量がやや低いので、必要に応じて実肥を施用する。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、委託プロ(食の安全・動物衛生プロ)
- 研究期間:2005~2017年度
- 研究担当者:高田兼則、谷中美貴子、石川直幸、船附稚子、伴雄介、加藤啓太
- 発表論文等:高田ら「びわほなみ」品種登録出願第32603号(2017年11月22日)