天敵温存植物スカエボラが飛ばないナミテントウ成虫の定着促進に及ぼす効果
要約
施設栽培ナス圃場にスカエボラを導入すると、飛ばないナミテントウ成虫が花粉等を食べることにより作物への定着が促進される。飛ばないナミテントウが長期間圃場内に維持されることで、アブラムシ防除効果を持続できる。
- キーワード:飛ばないナミテントウ、スカエボラ、アブラムシ、天敵温存植物、生物防除
- 担当:西日本農業研究センター・生産環境研究領域・虫害管理グループ
- 代表連絡先:電話084-923-5338
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
ナミテントウHarmonia axyridisの飛翔能力を欠く系統(飛ばないナミテントウ、以下トバテン)は、遺伝的に飛翔不能化していることで作物上に定着しやすく、アブラムシ防除に有効である。一方、トバテンの捕食により圃場内のアブラムシが少なくなると、餌不足による死亡や圃場外への逃亡が起きやすく、防除効果の持続性が期待できない。圃場内にアブラムシの替わりとなる餌資源を導入することによって、アブラムシが少ない状況でもトバテン個体を長期間維持し、防除効果の安定性と持続性を向上できると考えられる。そこで近年、複数の捕食性天敵の温存効果が確認されているスカエボラを施設栽培ナス圃場に導入し、トバテンの定着促進効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 施設栽培ナス圃場において、スカエボラ(クサトベラ科、別名ブルーファンフラワー)の苗をナスの株間(または畝肩)に植えると、トバテン成虫の定着率が向上する(図1)。
- スカエボラ上でのトバテン成虫の行動から、アブラムシを食べ尽くした場合は花粉が主な餌資源と推定できる(図2)。スカエボラの苗において花を除去したものと除去していないものを用意し、トバテン成虫の苗上での生存日数を比較すると、花を除去していないものの方が長い(図3)。
- スカエボラを混植した施設栽培ナス圃場ではトバテン成虫が長期間維持され、アブラムシの発生が抑えられる。スカエボラを混植していない施設栽培ナス圃場では、アブラムシが少ないとトバテンの定着期間が短く、再びアブラムシが増え始める。スカエボラの混植はトバテン成虫の定着に有効であるが、幼虫の定着や発育を補助する効果は認められない(図4)。
成果の活用面・留意点
- 本研究成果は、施設栽培ナス圃場においてナスとスカエボラを1:1の比率で定植した状況でのトバテン定着促進効果を示すものである。
- トバテン幼虫を封入した天敵製剤は施設野菜類用であり、露地では登録されていない。
- スカエボラの開花数が少ないと十分な温存効果が発揮されないため、採光に努めて開花数を確保する必要がある。
- スカエボラではヒラズハナアザミウマが発生することがあり、イチゴ等のヒラズハナアザミウマが被害を与える作物では使用を控える。
- スカエボラのほか、スイートアリッサム(アブラナ科)でもトバテン成虫に対する定着促進効果が確認されている。
- スカエボラは花き園芸植物として一般に利用されており、ホームセンター等で入手で
きる。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
- 研究期間:2011~2016年度
- 研究担当者:世古智一、安部順一朗、三浦一芸、飛川光治(岡山農研)
- 発表論文等:Seko T. et al. (2017) BioControl 62:221-231