やや晩生で多収・良食味の業務・加工用水稲新品種「 恋初めし」
要約
「恋初めし」は温暖地西部においてやや晩生に属する多収の粳種である。縞葉枯病に抵抗性で、穂いもちにも強い。やや大粒で良食味であり、業務・加工用としての利用が期待される。
- キーワード:イネ、業務・加工用米、多収、良食味、やや晩生
- 担当:西日本農業研究センター・水田作研究領域・水稲育種グループ
- 代表連絡先:電話084-923-4100
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
主食用米の約3割が外食・中食として消費されており、外食・中食事業者からのニーズに対応した業務・加工用米品種の育成が急務となっている。これまでに、多収の業務・加工用米品種として、やや早生の「とよめき」、中生の「あきだわら」、「やまだわら」、晩生の「たちはるか」などが育成されているが、業務用米を生産している法人等からは、更なる作期分散が可能なやや晩生の品種への要望が高まっている。そこで、やや晩生で多収の業務・加工用向け良食味品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「恋初めし」は、多収の業務・加工用品種「あきだわら」と、縞葉枯病抵抗性を有し、良質・良食味の「中国201号(後の「恋の予感」)」の交配後代から育成された品種である(表1)。
- 「きぬむすめ」より出穂期は3日、成熟期は5日遅く、「あきだわら」より出穂期は6日、成熟期は5日遅い、育成地ではやや晩生に属する。「きぬむすめ」と比較して、稈長は同等で、穂長は2cmほど長く、穂数は同等かやや少ない。耐倒伏性は"やや強"である(表1)。
- 精玄米重は「きぬむすめ」と比較して2割程度多収である(表1)。奨励品種決定調査では、平均すると「ヒノヒカリ」より14%多収である(図1)。玄米千粒重は、「きぬむすめ」、「あきだわら」より3g程度重く、玄米品質は「きぬむすめ」並である(表1)。
- 食味は「日本晴」と比較すると明らかに良好で、「きぬむすめ」と同等である(図2)。
- いもち病真性抵抗性遺伝子はPia、Piiを持つと推定され、葉いもち圃場抵抗性は
"やや強"、穂いもち圃場抵抗性は"強"である。縞葉枯病には"抵抗性"で、白葉枯病抵抗性は"やや弱"である。穂発芽性は"やや難"で、高温登熟耐性は"やや弱"である(表1)。
成果の活用面・留意点
- 出穂特性からみた栽培適地は関東以西であるが、かなり晩生となる北陸地域の大規模法人から、作期拡大のために導入の要望があり、北陸地域や瀬戸内海沿岸地域で数十haの栽培が予定されている。
- 高温登熟耐性が"やや弱"のため、登熟期が高温となる地域や作期では品質が低下するおそれがある。
- 耐倒伏性が"やや強"で不十分であるので、極端な多肥は避ける。
- 白葉枯病にやや弱いため、常発地での栽培には注意する。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、委託プロ(業務・加工用)
- 研究期間:2009~2017年度
- 研究担当者:重宗明子、中込弘二、出田収、石井卓朗、松下景、飯田修一
- 発表論文等:重宗ら「恋初めし」品種登録出願第33003号(2018年4月5日)