アメダスから直達日射量及び散乱日射量の時間別値を推定する方法

要約

近隣のアメダス観測値から、時間別の直達日射量と散乱日射量を推定する手法を開発した。これにより、任意地点における日射量を地形データから精度よく推定することができる。また本手法は、気象庁のメソ数値予報モデルによる推定にも適用できる。

  • キーワード:直達日射量、散乱日射量、アメダス、高解像メッシュデータ
  • 担当:西日本農業研究センター・傾斜地園芸研究領域・園芸環境工学グループ
  • 代表連絡先:電話0877-62-0800
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

周辺地形の影響を考慮して、精度よく任意地点の日射量を推定するには、直達日射量と散乱日射量のデータが必要である。近隣のアメダス観測値から直達日射量と散乱日射量の時間別値を簡便に推定する植山(2008)の方法があるが、日照時間がゼロとなる曇天日の精度が劣るという短所がある。そこで、植山(2008)の手法を改良して、新しい直達日射量と散乱日射量の時間別値の推定手法を開発する。さらに、気象庁の数値予報モデルのうちのメソモデル(MSM)による、直達日射量と散乱日射量の時間別値の推定可能性についても検討することで、農業向け気象情報の社会実装を推進する。

成果の内容・特徴

  • 推定モデルは、潮岬気象台における直達日射量と全天日射量の10年間(1997~2006)の観測値から開発されている。このとき、散乱日射量は全天日射量から直達日射量を引いた値とする。また、MSMによる推定モデルは、つくばにおける直達日射量と散乱日射量の3年間(2010~2012)の観測値から開発されている。
  • 日照時間が有の場合は、アメダスの日照時間データと大気外水平面日射量とから、時間別の大気外日射の減衰率を推定することで、直達日射量の時間別値が推定でき、散乱日射量の時間別値は、直達日射量を用いた無次元指標から推定できる。そして、日照時間が無の場合は、無次元指標を直接推定することで、散乱日射量の時間別値をする。日照時間が無の場合の直達日射量はゼロと仮定する(モデル1)。
  • MSMの出力値から、大気透過率及び無次元指標を推定することで、直達日射量と散乱日射量の時間別値が推定できる(モデル2)。
  • 札幌、福岡、石垣島における直達日射量と散乱日射量の観測値(2013~2014)から推定精度を検証した結果、アメダスによる推定値の2乗平均平方根誤差(RMSE)は、直達日射0.2MJm-2h-1、散乱日射0.3MJm-2h-1である。また、MSMによる推定のRMSEは、直達日射0.6MJm-2h-1、散乱日射0.5MJm-2h-1である。そして、全天日射量(直達日射量+散乱日射量)の日積算値および6時間積算値(JST10~15)の推定結果とRMSEおよび平均誤差(MBE)は、図1、2のとおりである。
  • 直達日射が120W・m-2以下の場合、直達日射量があっても日照時間はゼロである。ただし、2014年の札幌、福岡、石垣島のデータを調べた結果、日照時間ゼロの時の約80%は直達日射量もゼロであり、日照時間ゼロの時の約99%における直達日射量は、0.05MJ・m-2・h-1以下である。

成果の活用面・留意点

  • 本手法で得られた直達日射量及び散乱日射量の推定値と国土地理院の10m解像度や50m解像度の標高データを利用することで、10mメッシュや50mメッシュの日射量データが作成できる。

具体的データ

モデル1 アメダスによる直達日射量及び散乱日射量の推定モデル;モデル2 数値予報モデルによる直達日射量及び散乱日射量の推定モデル;図1 日積算全天日射量の観測値及びアメダスによる推定値;図2 6時間(JST10~15)積算全天日射量の観測値及びMSMによる推定値

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(SIP)
  • 研究期間:2016~2017年度
  • 研究担当者:植山秀紀
  • 発表論文等:
  • 1)植山(2008)近中四農研報、7:145-207
    2)Ueyama H. (2018) J. Agric. Meteorol. 74(1):29-39