本暗渠未整備の水田転換畑のチゼルプラウ耕は排水性を改善しダイズの収量を改善する

要約

本暗渠未整備の水田転換畑圃場においてダイズ播種前にチゼルプラウ耕を行うと圃場の排水性が改善され、ダイズの苗立ち率が高まり、収量が向上する。

  • キーワード:ダイズ、チゼルプラウ、転換畑、排水対策
  • 担当:西日本農業研究センター・営農生産体系研究領域・転換畑多収栽培グループ
  • 代表連絡先:電話084-923-4816
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

中国地方の中山間地のイネ-ムギ-ダイズの2年3作の水田輪作ではムギの収穫とダイズの播種は梅雨期と重なる。そのため、ダイズの安定多収化には播種期の遅延と湿害による生育抑制の回避技術の開発が必要である。チゼルプラウ耕は通常のプラウ耕に比べ作業能率が高く、また、ロータリ耕に比べ土壌水分の低下が速いとする報告や、水稲跡にチゼルプラウ耕を導入するとロータリ耕に比べ排水性が改善され、ダイズが多収となった報告がある。そこで、本研究ではチゼルプラウ耕の導入による水田転換畑の排水性の改善効果やダイズの増収効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ダイズ播種前に耕深約20cmでチゼルプラウ耕を行った区の地表から13~20cm程度の深さの土壌貫入抵抗は、行わない区に比べ低い傾向がある(図1)。
  • ダイズ播種前にチゼルプラウ耕を行った区の降雨後の地表下15cm土壌マトリックポテンシャルは、0から-40kPaの湿潤な条件では行わない区に比べ低い傾向がある(図2)。ダイズ播種前のチゼルプラウ耕は、排水性を改善する効果があると考えられる。
  • ダイズ播種前にチゼルプラウ耕を行った区の苗立率は行わない区に比べ高い傾向があり、前者の坪刈収量は後者より有意に高い(図3)。本暗渠未整備の現地水田転換畑にダイズ播種前のチゼルプラウ耕を行うと播種後にまとまった降雨があってもダイズの苗立率が改善され、全刈収量が改善される(図4)。ダイズ播種前のチゼルプラウ耕は、排水性を改善し湿害の軽減とダイズの多収化に有効と考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 西日本農研(福山)の所内圃場と東広島市の現地圃場で実施した試験である。前作物はコムギ。現地圃場では雑草が多かったため、麦稈を含め残さを持ち出した。所内圃場では現地に合わせるため、麦稈を持ち出した。雑草が少ない条件ではフレールモーアで残さを処理すればチゼルプラウ耕、その後のロータリシーダによる耕耘同時播種は可能である。
  • 試験に使用したチゼルプラウはMSC5FRK(スガノ農機)で、耕起幅1.6m。なお、MSC5FRKの現在の型式はC165CFである。

具体的データ

図1 ダイズの播種前のチゼルプラウ耕の有無が深さ30cmまでの土壌貫入抵抗に及ぼす影響(西日本農研圃場 2017年),図2 ダイズの播種前のチゼルプラウ耕の有無が降雨後の土壌マトリックポテンシャルに及ぼす影響(西日本農研圃場 2017年),図3 播種前のチゼルプラウ耕の有無とダイズの苗立率及び収穫(西日本農研所内圃場2017年),図4 播種前のチゼルプラウ耕がダイズの収穫に及ぼす影響(東広島市現地圃場)

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2017年度
  • 研究担当者:片山勝之、山崎諒、川崎洋平
  • 発表論文等:片山ら(2018)日作紀、87(4):312-318