子実肥大始期における光環境の改変によるダイズの青立ち発生促進手法

要約

栽植密度変更処理および遮光解除処理による子実肥大始期における地上部の光環境の改変は、ダイズの青立ち発生を促進する。栽植密度変更処理は圃場で簡易に青立ちの発生を促進できる実験手法として利用できる。

  • キーワード:ダイズ、青立ち、栽植密度、遮光処理、シンク・ソースバランス
  • 担当:西日本農業研究センター・営農生産体系研究領域・転換畑多収栽培グループ
  • 代表連絡先:電話084-923-4816
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ダイズの青立ちは、収穫期になって莢が成熟しても茎葉の成熟が進行せず水分含量が高く緑色のままになる現象で、発生圃場ではコンバイン収穫の作業効率が著しく低下し、茎葉汁による子実の汚損が発生するため、近年各地で問題となっている。青立ち発生メカニズムを解明し、対応策を確立するためには、安定的に青立ちの発生を促進する処理が必要である。そのような処理として、摘莢処理(生育中に莢を人為的に切除する処理)がすでに広く用いられているが、処理に必要な労力が大きく、特に圃場試験レベルでは実行が困難である。このため、栽植密度を生育中に間引きで変更することで、安定的に青立ちの発生促進を図る手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 開花始期(R1)および子実肥大始期(R5)における栽植密度変更処理により、品種「サチユタカ」において、青立ちの発生が有意に促進される。その程度は、R1期処理よりもR5期処理で大きい(図1、表1)。
  • 遮光装置(図2)を用い、R1およびR5に遮光シートを外すことで、栽植密度変更処理における光環境の改善を再現すると、R5における遮光解除処理も、播種から収穫期まで遮光を継続した区および播種から収穫期まで遮光をしなかった区と比較し、有意に青立ちの発生が促進される(表2)。
  • R5における地上部の光環境の改変は、青立ちの発生を促進する。これは、R5以降の光合成の急激な増加によって、シンク・ソースバランスが崩れ、ソース過剰状態になったためであると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • R5における栽植密度変更処理は、圃場で簡易に実行可能な、青立ちの発生を促進できる処理であり、今後の青立ちの研究において有用な実験手法として利用できる。
  • 本結果は、広島県福山市西日本農業研究センター所内圃場で、水管理および病虫害防除を適宜行った条件下で得られたものであり、気象条件等の異なる場合は、処理条件の検討が必要となる可能性がある。
  • 本結果のメカニズムについての考察は、従来の仮説と矛盾しないが、これを証明するためにはさらなる研究が必要である。

具体的データ

図1 栽植密度変更処理がダイズの青立ちに及ぼす影響(2014年度の試験における、収穫期における各処理の代表的な植物体の外観),表1 栽植密度変更処理がダイズの青立ちに及ぼす影響,図2 遮光装置の模式図と外観,表2 遮光解除処理がダイズの青立ちに及ぼす影響

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2014~2016年度
  • 研究担当者:山崎諒、田中朋之(京都大)、白岩立彦(京都大)
  • 発表論文等:Yamazaki R. et al. (2018) Plant Prod. Sci. 21(2):83-92