早生・多収で高品質の六条裸麦新品種「ハルアカネ」

要約

「ハルアカネ」は、「イチバンボシ」より穂長が1cm程度長く、約2割多収で、精麦白度が高く高品質な早生の六条裸麦である。うるち性であるがβ-グルカン含量がやや多く、穀粒硬度が高いため搗精時間は長いが、砕粒率が低い。

  • キーワード:ハダカムギ、早生、多収、β-グルカン、高品質
  • 担当:西日本農業研究センター・畑作園芸研究領域・畑作物育種グループ
  • 代表連絡先:電話 0877-63-8143
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

裸麦は需要に対して生産量が少ない逆ミスマッチ状態が続いているため、実需者からは「イチバンボシ」「トヨノカゼ」などの既存品種と同等以上の品質で安定供給が可能な多収品種の導入が強く求められている。またもち麦(もち性大麦)の需要拡大に伴い、近年は健康機能性成分として水溶性食物繊維のβ-グルカンへの認知度が高まっており、うるち性品種においてもβ-グルカン含量が多いことは食品原料としての価値が高いと考えられる。
そこで、β-グルカン含量が多く高品質で、早生・高位安定多収の裸麦品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「ハルアカネ」は、大粒で高白度の「四R系2252」を母親、早生で多収の「四国裸99号」を父親として交配し、派生系統育種法により育成した渦性の六条裸麦である。
  • 播性程度は"V"で、出穂期は「イチバンボシ」と同程度、成熟期は1日早い早生である(表1)。
  • 「イチバンボシ」より稈長はやや長く、穂数は同程度~やや少なく、穂長が1cm程度長い(表1)。
  • 栽培年次に関わらず安定的に多収で(図1)、育成地における平均収量は標肥区・多肥区ともに「イチバンボシ」より約2割多い(表1)。
  • 「イチバンボシ」と同様に、オオムギ縞萎縮病には強く、うどんこ病・赤かび病抵抗性は"中"で、穂発芽性は"難"である(表1)。
  • 硝子率は「イチバンボシ」よりやや低い(表1)。
  • うるち性であるがβ-グルカン含量は「イチバンボシ」より多い(表1)。
  • このため「イチバンボシ」よりも穀粒硬度が高く(図2)、60%歩留搗精時間が長く、砕粒率が低い(表1)。
  • 精麦白度が高く優れる(表1・図2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:生産者、実需者
  • 普及予定地域・普及予定面積:大分県において「トヨノカゼ」代替として2020年度に奨励品種(認定品種)に採用する見込みで、2019年度から種子生産を開始する。同県内全域で900haに普及見込みである。このほか、西日本地域を中心とする裸麦生産県への普及も見込まれる。
  • その他:栽培上の注意点として、うどんこ病と赤かび病には強くないので適期防除を行う。

具体的データ

表1 「ハルアカネ」の主な特性,図1 収量比の年次変動,図2 精麦白度と穀粒硬度(2011~2018年度平均)

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2019年度
  • 研究担当者:吉岡藤治、杉田知彦、髙橋飛鳥、栁澤貴司、長嶺敬、髙山敏之、土井芳憲
  • 発表論文等:吉岡ら「ハルアカネ」品種登録出願公表 第34236号(2020年1月23日)