硝子率が低く高白度で早生・多収の六条裸麦新品種「ダイキンボシ」
要約
「ダイキンボシ」は、「イチバンボシ」と同程度の早生で、10cm程度長稈で、安定的に多収なうるち性の六条裸麦である。うどんこ病に抵抗性である。硝子率が低く、精麦白度が極めて高く、砕粒率が低いなど、原麦・精麦品質が優れる。
- キーワード:ハダカムギ、多収、うどんこ病抵抗性、低硝子率、高白度
- 担当:西日本農業研究センター・畑作園芸研究領域・畑作物育種グループ
- 代表連絡先:電話 0877-63-8143
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
裸麦は需要に対して生産量が少ない逆ミスマッチ状態が続いているため、実需者からは「イチバンボシ」などの既存品種と同等以上の品質で安定供給が可能な多収品種の導入が強く求められている。また生産現場では、近年硝子率が高くなる傾向があり、ランク区分の基準値(50%以下)や許容値(60%以下)をクリアできず、生産単価の低下による収益低下が問題となっている。
そこで、硝子率が低く精麦白度が高いなど品質ランク区分をクリアし易い高品質で、早生で高位安定多収の裸麦品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「ダイキンボシ」は、うどんこ病に強い「四R系2643」を母親、早生・多収で高白度の「四国裸111号」を父親にして交配し、派生系統育種法により育成した渦性の六条裸麦である。
- 播性程度は"IV"で、出穂期・成熟期が「イチバンボシ」より1日程度早い早生である(表1)。
- 「イチバンボシ」より稈長が10cm程度長いが、耐倒伏性は「イチバンボシ」と同等以上である。穂数は同程度で、穂長はやや長い(表1)。
- 育成地における平均収量は「イチバンボシ」より約2割多収である(表1)。
- うどんこ病抵抗性は"強"である。「イチバンボシ」と同様に、オオムギ縞萎縮病には強く、赤かび病抵抗性は"中"で、穂発芽性は"難"である(表1)。
- 硝子率が「イチバンボシ」より低い(表1・図1)。
- 原麦白度が高く、穀粒硬度と60%歩留まり搗精時間は「イチバンボシ」と同程度だが、砕粒率が低い(表1)。
- 精麦白度が極めて高く優れる(表1・図2)。
- β-グルカン含量は「イチバンボシ」よりやや多い(表1)。
普及のための参考情報
- 普及対象:生産者、実需者
- 普及予定地域・普及予定面積:福岡県において「イチバンボシ」代替として2019年度に準奨励品種に採用され、福岡市・筑紫野市・久留米市・朝倉市などで5年後を目途に400haに普及見込みである。このほか、西日本地域を中心とする裸麦生産県への普及も見込まれる。
- その他:栽培上の注意点として、赤かび病には強くないので適期防除を行う。やや長稈であるため、倒伏しないよう適正な肥培管理を行う。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間::2004~2019年度
- 研究担当者:吉岡藤治、杉田知彦、髙橋飛鳥、栁澤貴司、長嶺敬、髙山敏之
- 発表論文等:吉岡ら「ダイキンボシ」品種登録出願公表 第34237号(2020年1月23日)