もち麦に対する消費者の認知状況と食習慣の実態

要約

消費者におけるもち麦の認知状況は、知っている人は3割ほどで少なく、習慣的に食べる人も少ない。少数の習慣的にもち麦を食べる人は、食べ続ける期間にかかわらず高い頻度で食しており、年齢は20~30歳代、居住地域は中国四国・九州沖縄、世帯収入は500万円以上で多くなる。

  • キーワード:もち麦、消費者、認知状況、食習慣
  • 担当:西日本農業研究センター・営農生産体系研究領域・農業経営グループ
  • 代表連絡先:電話 084-923-4816
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

もち麦(モチ性オオムギ)に対する国内需要が拡大する中で、消費者のもち麦に対する認知状況や食習慣の実態については明らかになっていない。他方、条件不利とされる中山間地域の一部の農業経営では収益向上を期待してもち麦を生産しているが、もち麦に対する消費者の認知状況や消費実態に関する情報は有しておらず、プロダクトアウト型の玄麦生産にとどまる場合がある。もち麦を生産する農業経営がもち麦部門を持続的な収益源とするためには、いかなる消費者がどのようにもち麦を食べているかといった消費実態を把握し、それを踏まえたマーケットイン型のもち麦生産・加工・販売を実施する必要がある。そこで、全国の約1,000人の消費者を対象にしたウェブアンケートにより、もち麦の認知状況と食習慣を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • もち麦に対する消費者の認知状況は、「知っている」が29.7%、「聞いたことはあるがよくわからない」が26.1%、「知らない」が44.2%である(表1の上段)。また、もち麦を「知っている」または「聞いたことはあるがよくわからない」と回答した者のうち、もち麦を「食べたことはあるが習慣にはなっていない」が40.0%、「食べたことがあり習慣になっている」が11.8%、「食べたことがない」が48.3%である(表1の下段)。
  • もち麦を習慣的に食べる人のうち、もち麦を食べる頻度は「ほぼ毎日食べる」(32.8%)が最も多く、もち麦を食べ始めた時期は「1年前」(27.9%)が最も多い(表2)。もち麦を食べる頻度と食べ始めた時期との関係をみると、もち麦を食べ続けている消費者の特徴は、2~3年前より最近(もち麦の流行後)に食べ始めた人(図の左)が大半であり、その人のもち麦を食べる頻度は「週に1回以上食べる」(図の赤)と高い。また、食べ続ける期間の長短にかかわらず、「週に1回以上食べる」(図の赤)という高頻度ユーザーが過半数となる。
  • もち麦を習慣的に食べる人は、男女ともに概ね1割程度であるが、年齢では20歳代や30歳代、居住地域では麦食文化が広がる中国四国や九州沖縄に多く、世帯収入が500万円以上で多くなるといった特徴がある(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 中山間地域でもち麦を生産する中小規模の農業者やそれら農業者と連携してもち麦の販路開拓と定着を図ろうとする販売業者等が、ターゲット顧客を設定する際に利用できる。
  • 分析に用いたデータは2018年の3月14日~15日の間に専門のWeb調査会社に委託して得たものであるため、時間の経過とともに消費者におけるもち麦の認知状況や食習慣には変化が生じる場合がある。

具体的データ

表1 もち麦の認知状況と摂食経験,ひょう2 もち麦を食べる頻度と食べ始めた時期,図 もち麦を食べ始めた時期と食べる頻度の関係,表3 もち麦の食習慣の有無別の属性の相違

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(28補正「地域戦略プロ」)
  • 研究期間:2017~2019年度
  • 研究担当者:大室健治、吉岡藤治、石川直幸、高橋肇(山口大)、種市豊(山口大)
  • 発表論文等:
    • 大室ら(2020)農業経営研究、57:55-60