ブラインシュリンプ乾燥卵は天敵タバコカスミカメの代替餌として利用できる

要約

ブラインシュリンプ乾燥卵は、捕食性天敵タバコカスミカメの代替餌として利用できる。ブラインシュリンプ乾燥卵は、従来用いられているスジコナマダラメイガ卵より安価で、ほぼ同等の増殖効率をもたらすため、より低コストな飼育システムへの応用が可能である。

  • キーワード:タバコカスミカメ、ブラインシュリンプ、生物的防除、生存曲線
  • 担当:西日本農業研究センター・生産環境研究領域・虫害管理グループ
  • 代表連絡先:電話 084-923-5389
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

環境保全型農業の推進には、天敵の利用拡大が重要な課題となる。タバコカスミカメNesidiocoris tenuisは、アザミウマ類やコナジラミ類の農業害虫を捕食するため、生物的防除資材として利用されている。しかし、タバコカスミカメの飼育に用いられているスジコナマダラメイガ卵は高価なため、飼育コストが非常に高い。そこで、熱帯魚の餌としても流通している、安価なブラインシュリンプ卵が、タバコカスミカメの代替餌として利用できるかを評価する。ブラインシュリンプ卵は、乾燥状態で販売されているが、タイリクヒメハナカメムシなどの捕食性カメムシでは、吸水時に餌として機能することが確認されている。そのため、ブラインシュリンプ乾燥卵および吸水卵、スジコナマダラメイガ卵で比較を行う。

成果の内容・特徴

  • ブラインシュリンプ乾燥卵および吸水卵、スジコナマダラメイガ卵の3種類の餌間で、タバコカスミカメの羽化率、卵期間、ふ化率に有意な差はない(表1)。
  • 幼虫の発育期間は、スジコナマダラメイガ卵、ブラインシュリンプ乾燥卵、吸水卵の順で長くなり、スジコナマダラメイガ卵に比べて、ブラインシュリンプ乾燥卵、吸水卵は、それぞれ約2、4日長い(図1)。
  • 成虫の生存期間は、スジコナマダラメイガ卵とブラインシュリンプ乾燥卵で同等であるが、ブラインシュリンプ吸水卵を与えた場合は短くなる(図2)。
  • 雌の生涯産卵数には、餌間で有意な差はない(図3)。
  • タバコカスミカメのブラインシュリンプ乾燥卵での増殖は、スジコナマダラメイガ卵での増殖に比べ、発育期間はやや劣るものの、羽化率や成虫の生存期間、生涯産卵数など、その他の項目ではほぼ同等である。以上のことから、ブラインシュリンプ乾燥卵はタバコカスミカメの代替餌として利用できる。

成果の活用面・留意点

  • ブラインシュリンプ卵の販売価格は100gあたり約3000円であり、スジコナマダラメイガ卵の販売価格の約1/10であるため、代替餌として導入することで、タバコカスミカメの生産・維持コストを軽減できる。
  • ブラインシュリンプ卵は、水に浸漬した状態では餌としての機能が低下することから、水に浸らないような条件下で使用する。

具体的データ

表1 各餌を与えたタバコカスミカメの羽化率と卵期間、ふ化率,図1 タバコカスミカメの発育期間,図2 タバコカスミカメ雌成虫の生存曲線,図3 タバコカスミカメ雌成虫の生涯産卵数

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2018~2019年度
  • 研究担当者:大鷲友多、林正幸、安部順一朗、三浦一芸
  • 発表論文等:Owashi Y. et al. (2020) Appl. Entomol. Zool. 印刷中 doi:10.1007/s13355-019-00660-y